文化祭まであとわずか。どうやら階段部も参加することになるようで、準備が大変だ。そんな中、井筒はひとり苦悩していた。周囲の状況が状況だけに、間違った告白であることを、なかなか凪原に言い出せないのだ。なし崩し的にダブルデートが組まれて、どうしようかと迷っている中、文化祭で交流することになっている山上桔梗院の生徒・槙島が、妹を泣かせたと井筒に敵意を向けてくるというトラブルが勃発して……
井筒の覚えのないことで他校の生徒とトラブルになり、階段レースで決着をつけようとするお話ですが、ぶっちゃけ階段レースよりも、井筒と凪原の関係がとても良かったです。
凪原に謝って告白を取り消したいのに、クラスメイトの女子やら九重やらが盛り上がってしまって、ダブルデートが組まれた時の井筒の様子には、可哀想すぎて笑ってしまいました。まあ、自業自得だし、可哀想さで言ったら、凪原の方が可哀想なので同情はしないけど。
ただ、今まで、お気楽な印象があった井筒が、神庭と本音のやり取りができるようになったところには、嬉しい気持ちになりましたね。仲間っていいです。
槙島と井筒の騒動から、階段レースになるのは、どうにも微妙なんですが、九重がいたからしかたないか。まあ、勝負よりも、凪原と槙島の妹である愛との話のためのレースでしたからね。
状況に流されて、期待に応えるために自分を押し殺して。そんな自分だったことを省みた凪原が、親友のために叫ぶシーンは、良かったなあ。彼女が変わろうと思ったきっかけは、井筒だと思いますが、それを後押ししたのは、槙島愛だったんじゃないかと思いました。
いつの間にやら、三島や凪原まで参加することになったレースでしたが、一番印象的だったのは、凪原が井筒にバトンを渡すシーンですね。何も言えないことが、言葉にならないものが、バトンと共に伝わってる感じがして、素敵でした。イラストもいいですよねー。
井筒が応えた「任せろ」という言葉がかっこ良さに惚れ惚れしました。
とまあ、ここまででも面白かったんですが、一番面白かったのは、最後の章、文化祭当日のお話でしたね。「筋肉の案内板」から始まって、各部員たちの文化祭の模様があるだけなのに、笑いとニヤニヤが止まりません。サエぽんのキザっぷりには、思わず「きゃー」と叫びたくなりましたし、美冬姉さんの態度にニヤリとさせられましたし、ナギナギの決意には、頑張れ!!と応援したくなるものがありましたから。でも一番好きなのは、刈谷と中村のシーンかな。短いやり取りの中に、多くのことを感じさせるものがありました。
いやあ、面白かった。レースはあくまできっかけに過ぎず、それ以外のところでも青春してるってことが、たっぷり伝わってくるお話でした。
会長が何を考えてるのかわからないのはいつものことですが、どうやら山上側にもいろいろあるみたいだし、馬淵については、天ヶ崎だけじゃなくて、神庭も関係してくるっぽいので、このあたりがどうなってくるのか楽しみですね。
学校の階段 5 (ファミ通文庫 か 8-1-5)
櫂末 高彰
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