塔がそびえ立つ積野辺は、守代一族の操る「歪気」の力で栄えていた。そんな守代本家と対立し、学園の生徒会長兼理事長を務める守代皆理の庇護の下で、天涯孤独の西条なごみは、親友の華多那と高校生活をすごしていた。
ところがある日、画家であったなごみの父親の未発表作品が見つかったという知らせを受けてから、学園内となごみの周りでは、ぎくしゃくとした空気が漂い始めて……
「歪気」やそれに関連するものの説明が、あまりなされないまま物語が進んでいくので、はじめは疑問符ばかりでしたが、どちらかといえばそのあたりの話は、味付けみたいなものですね(というと語弊がありそうだけど)。皆が何かを隠している ― 親友さえも信じられなくなっていく西条なごみと、親友と任務の間で揺れる華多那のお話です。
少しだけ他とは違う力に影響を受けているとはいえ、どこにでもあるような都市なだけに、ワイワイと楽しそうな学園生活が微笑ましいですね。生徒会長の皆理が破天荒ではあるものの、なごみと華多那の仲睦まじいところには、心温まるものがありました。
だからこそ、徐々に徐々に亀裂が入っていくところが辛いんですが。
両親のことについて何も知らないことが、コンプレックスになっている以上、父や母のことについて、何か隠していることがわかったら、いろいろと刺激されるものがあるのはわかります。一度生まれた澱は、無条件で信頼していた人であっても、いや、むしろ親友だったからこそ、反動が大きくなっていったんでしょうね。ある意味、甘えみたいなものもありましたが、行動には、態度とは裏腹に心の痛みばかりが伝わってきました。
華多那のほうでも、なごみが一番大事なのに、大事だからこその行動なのに、それがわかってもらえないことのショックや自分の覚悟の甘さなどが見えてきますね。
冷静に考えれば、そこまで大きくなることではないはずなのに、父のことや任務のことなど、二人の心の中が、ぐちゃぐちゃと混乱して、亀裂が溝となっていくところには、心苦しいものがあります。
敵の思惑があったからこそ、溝が深くなっていったわけですが、覚悟を経ることで、ふたりの成長を感じられるところは良かったです。ただ、真実に気づいたことで、今までとは違った角度から見ることになってしまうあたりは、切ないものがありますね。
今回の話で、なごみのほうは覚悟が見えましたが、まだ華多那のほうは揺れているので、このあたりの話が次に語られるといいなあ。そもそも、皆理側の話は、大雑把なところしか語られていないので、こちら側も気になりますね。どうなるのか楽しみ。
塔の町、あたしたちの街
扇 智史
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