「ヴァチカンはもう動いた」― その言葉を聞いたときから、アデルの様子は尋常じゃなくなった。夜な夜なまさかりを研ぎ、銃をバラしては組み立てと、ピリピリし続けている。城を守るためとはいえ、その様子を見ているのが辛くなった一彦は、何とか彼女を励ましたいと思ったが……
物の怪がはびこるフリューゲルトの城に、ヴァチカンが手を伸ばし始めて……というお話ですが、血で血を洗うような展開ではなく、コミカルな雰囲気はそのままだったので良かったです。
いつでも戦闘に入れるようにと、緊張感を増すアデルに対して、何とか気持ちを和らげてあげようとする一彦の行動がいいですね。うまくいかないことが多いんですが、言葉に込められた思いは、アデルにも伝わってるんじゃないかなあ。いつもにも増して、真っ赤になる姿には、ニヤニヤさせられますね。
政治的な駆け引きの妥協点から、ヴァチカンが監視としてセルゲイを送り込んできたことで、アデルの過去をあまりしらない一彦が、やきもきしたり、対抗して無理して頑張るところがわかるなあ。負けられないって気持ちになりますよね。惚れたらどうしたって弱くなる部分が出てくるし、逆に強くなる部分も出てくるのが、とても共感できるものでした。
いったいヴァチカンとどうすべきかと悩んでいるときに、よりによってな事件が起きるわけですが、フリューゲルトの名を汚すものであった以上、見逃せない気持ちは、今までのフリューゲルト城でのやり取りを見ていればわかりますよね。まさか日本へ行くとは思っていなかっただけに、ちょっと感慨深いものがありましたが、わりとあっさりなのね。
逆にいえば、一彦にとってフリューゲルトが自分の家になったんだろうなあと思いましたが、考えすぎかしら。何気にペラジーのイラストが可愛くて仕方なかったのは内緒。
己のミスから自己犠牲を投げかけるアデルに対して、家族という言葉を使ったフリートたちとのやり取りには、心が温かくなりましたね。物の怪たちの支えがあるからこそ、あの城は成り立ってるんだなあと実感させられます。思わず、良かったね、アデルと言いたくなる。
領主としての判断は、己の愛する人たちがいる場所を犠牲にするものであっただけに、苦渋のものがあったと思いますが、それでもあの言葉を、涙を流しながらもあの命令を出したアデルはカッコよかったです。
いやあ、ほんと面白かった。これからいろいろたいへんなことが待ち受けてるかもしれないけれど、ふたりなら乗り越えていけるよね。このふたりには、いつまでも、笑っていて欲しいなと思いました。
「世界で一番いらない遺産」が「世界で一番すてきな遺産」に変わって行くお話が、これで終わってしまうなんて残念でなりませんが、ハッピーエンドに微笑みながら、次のシリーズを待ちたいと思います。
オススメ。
スイートホームスイート4 世界で一番すてきな遺産
佐々原 史緒
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