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[野村美月] “文学少女”と繋がれた愚者

図書館の本のページが切り取られるという事件が発見してしまったら、遠子先輩の憤りを止める事なんてできなかった。張り込みを続けて捕まえた犯人は、何と心葉のクラスメイトである芥川くんだった。
遠子先輩は彼を突き出さず、文化祭で文芸部が行なう劇に参加するよう要請して、芥川くんは引き受けた。だが、そのとき、既にトラブルは始まっていたのだ……

やっぱり、遠子先輩の作品に対する思いはいいなあ。愛情溢れる言葉なので、読んでいて楽しいし、その作品を読みたくなりますね。ちょっと暴走するのはご愛嬌ってことで。その暴走のおかげで、なぜか演劇をやる事になってしまった文芸部のお話です。部員の人数が少ないので、芥川くん、琴吹さん、竹田さんもお手伝いをしてくれます。

一見ほのぼのとした始まりなんですが、芥川くんが、これほどの過去を抱えていたとは思いませんでした。ところどころに感じられる空気の重さに、不安を覚えさせられて、徐々に袋小路へとハマっていく芥川くんに、心苦しさを覚えます。
ただ、そんな彼の苦しさよりも印象的だったのは、心葉が芥川くんの闇の部分に近づいていくところですね。

誰からも距離を置いていたのに、辛くなることがわかっていたのに、放っておけなかったのは、過去の自分に重ね合わせたからでしょうか。それとも、友達としての意識があったからでしょうか。いろいろなことを感じさせてくれる描写に、恋って、心ってホント難しい思いました。

そういえば、琴吹さんが心葉くんと本格的に絡み始めましたね。相変わらず心葉くんの前では突っ張ってますが、何かあると、照れたり、心配したり、噛み付いたりと、揺れる乙女心が前面に出ていて可愛いです。気づいてあげてよ、心葉くん
遠子先輩には彼氏がいるかもなんて言って、心葉が(違うことなのに)落ち込むと、慌ててフォローするあたり、悪い子になれなそう。
昔、琴吹さんと心葉がどこで会ったのか、なぜ勘違いをしているのか、気になるところ。

今回は、なんといっても遠子先輩が、最高に素敵でした。騒いだり、ポカしたりと、とても頼りになるようには見えませんが、心葉が辛いときは、しっかり支えてくれるんですよね。気まずい思いをしている心葉をさりげなく迎えに来るところとか、思わずグッときましたし、何より舞台のシーンのすばらしさといったら!
それぞれが抱えている闇を吹き飛ばす長広舌に、心が熱くなりました。あの舞台を見ていたら、間違いなく遠子先輩に心を奪われてしまうでしょうね。ああ、見てみたいなあ。

いろいろドロドロしたものがあったものの、素敵な友情が芽生えて、いい話だったなあ。と思っただけに、最後の手紙は衝撃的でした。途中で気づかされたときには、背筋が寒くなりましたよ。
また少し心の闇が晴れたかに見えた心葉ですが、これはどん底に落とされるかも知れませんね。遠子先輩なら何とかしてくれると思いつつ(願いつつ)、心葉の気持ちを考えると、次作が怖くて怖くて。でも楽しみです。
オススメ。

“文学少女”と繋がれた愚者 (ファミ通文庫) - 野村 美月

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