「世の中、知らないでいいことたくさんある。わたししゃべらないの、そのせい」
「オレにとっちゃ、そんな御託はどうでもいいんだよ。ただひとつだけ、忘れてもらっちゃ困ることがあるだけだ」
「それ、なに?」
「特急パパロは一度引き受けた仕事は必ずやり遂げる」
巨鳥による競争が盛んな山岳国家ラビーヌ王国で、国定競鳥騎手を目指す少年テオが、怪しげな少女・リーンを人目につかないように天都まで送り届けるという仕事を引き受けたら、何者か襲い掛かってきて……という空を翔る冒険と恋の物語。
これは最高に面白かった!なんて素敵なボーイ・ミーツ・ガールなんでしょう。
出会いは最悪で、口では勝てないし、すぐ暴力振るわれるし、でも、そんなリーンが時折見せる本当の笑顔を見たら……気になっちゃいますよね。自分の体の大きさにコンプレックスを持ってるテオは、何かと彼女に突っかかるものの、放って置けなくなって、天都までの道のりを共に行く姿が微笑ましいです。
一方のリーンも、自身の使命のために、近しい人を作らぬようにしていたのに、テオや彼の友だちとの触れ合ったことで、ほんのひと時でも、自分に降りかかる寂しい未来を忘れることが出来たシーンがとてもよかったです。
中でも、テオのことが好きな競鳥騎手仲間のララとリーンが、お祭りの舞台で、踊りを見せるシーンが好きです。初めは意地悪で誘ったのに、リーンの踊りを見るうちに熱が入って踊りを披露し、リーンもまた共に踊る楽しさを知って。相乗効果が見える舞台は、ほんの数ページのシーンだったけれど、音が聞こえて、景色が見えて……、鳥肌が立ちました。ああ、いいなあ、この雰囲気。
こうやってリーンが心開いていくのが見えたからこそ、彼女が背負わされてるものの重さがつらくなるんですけどね。
テオと彼の鳥・ミルヴィルと共に、空を飛び、地を走り、鳥と遊んでいった天都までの道のりは、何も知らなければこれ以上ないぐらい嬉しいものだったんですが……。リーンを狙うものの手は、少しずつ伸びていって。
お互い心の奥に秘めた思いを自覚しながら、それでも決して逃げなかった少年少女の姿が心に残りました。
いやあ、面白かった!
唐突な別れがあり、それでもなお、立ち上がった少年と、最後まであきらめなかった少女と、主人の下に帰るためにがんばった鳥と。みんなの思いが胸にじんときました。
こんな風に大空を翔けてみたいですよね。文句なしでオススメです!
バード・ハート・ビート 舞姫天翔! (ファミ通文庫)
伊東 京一
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