「ワッヅから聞いたんだけど、パドゥーラにいたセイバーやハンターが、みんな死んでしまったっていう話をね。それとこの生態系の異常の件と、何か関係があるのかい」
「わたしには、わからない。ただ、生態系に狂いが生じた時期と、彼らの死が、重なっているという真実があるだけだ」
大地の96%以上を多い尽くすという樹海の隙間に国を作り、獣や虫けらと共存しながら人々が生きている世界で、流れ森林保護者である若き女・ライカが、パドゥーラ国の領主セネメスより異常発生したバンクシアワームの駆除を依頼されて……というお話。
これは面白かった。
ワームの駆除をするためには、その生態を知り、罠を仕掛けていくことになるんですけど、そもそも異常発生した原因がつかめないため、一時しのぎはできても……という状況の中、どこかに原因があるはずだと、ミッシングリングを探していく展開が面白いです。
駆除するワームの性質を明らかにして、天敵の動物やワームを探して食わせてしまえばいいとか、メスの匂いにオスが惹かれてくるからそれを利用してとか、タイトルどおり BIOME = 生物群系のあたりを使って、試行錯誤していくところは、ほんと面白くて、ひょんなことから、ワームの新たな性質が見えたり、駆除するための意外なヒントが隠されていたりしているのを見つけていくと、昆虫博士なライカに対して、それでそれで?と尋ねたくなるものがあります。実際にワームの大群なんて目にしたら、一目散に逃げると思うんだけど、知的興奮みたいな刺激がたまりませんね。
それにしても、食物連鎖じゃないですけど、自然界の繋がりがうまくできてるよなあと思うことがしばしばあって、こういうところも魅力のひとつかな。
そしてようやく異常発生したワームを駆除できる手立てが見つかったと思ったら、そこに人為的な作為を感じてきて、今度は謀略的要素が満載になり、これまでワーム駆除の方面では活躍していたライカが後手に回ってしまうんだからやってくれる。なんせ領主まで……ですからね!
仕掛け人の謀略がすべて見えたと思ったら、そこからさらにどんでん返しがあるから油断できない。呪いに怯えた元ハンターの叫びに涙して、ひっくり返された状況で諦めなかったライカの行動に無邪気な子供がかけた言葉にグッときて。
いやあ、面白かった!
ワームや樹海、獣たちという敵対するものを動かしていたのは、やはり人間なんだとわかってくるところには、ゾクっとするものがあったけど、これを乗り越えていけるのもまた人間なんですよね。
ライカの恋……未満のところがちょっと物足りなかったけど、とても魅力的なお話でした。この作者は追いかけていこうと思います。
第二回「えんため」大賞入賞作。
BIOME―深緑の魔女 (ファミ通文庫)
伊東 京一
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