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[小川一水] 妙なる技の乙女たち

軌道エレベーターは赤道に建てるのがもっとも安いが、「使える赤道」は意外に少ない。人と資本を集中でき、安全な場所として、シンガポール沖リンガ諸島で、世界最初の軌道エレベーターの建設が始まった。それまで熱帯のリゾート地だったリンガ島は、宇宙産業の都市となったが、そこには額に汗して働くさまざまな女性たちがいて……

東南アジアの海上都市、リンガを舞台に、働く女性たちを描いた物語です。以下の七編収録されています。

  • 駆け出しのデザイナーが宇宙服のデザインに挑む「天上のデザイナー
  • 小舟タクシーの女艇長を描く「港のタクシー艇長
  • グレーな行為で、環境保護区に建物を建てていた企業の女社長の正義を描く「楽園の島、売ります
  • 保育園に迷い込んできた少年との交流を描く「セハット・デイケア保育日誌
  • リリーフ・アテンダントとして軌道エレベーターに乗り込んだ女性を描く「Life me to the Moon
  • 機械を腕のように扱う彫刻家の挑戦を描く「あなたに捧げる、この腕を
  • 宇宙で美味しいものを食べるには?宇宙に人が根付くことを目標とする女性を描く「the Lifestyles Of Human-beings At Space

宇宙ものというとロマンを求める、みたいなところがあったりするんですが、もっと現実を見たお話ですね。自分の成せることは何かと考え、目標に向かって働く女性の姿が、とても格好いい。時に人が、時に自然が、時に規則が、立ちはだかるんですが、それでも決して諦めない姿が熱くて、思わず拳をグッと握るところもありました。

どれもこれも面白く、好きなお話ばかりなんだけど、その中でも「天上のデザイナー」「セハット・デイケア保育日誌」「Life me to the Moon」「the Lifestyles Of Human-beings At Space」が、好きだなあ。

天上のデザイナー」は、宇宙服のデザインコンペに、駆け出しのデザイナーが挑戦するお話なんですが、宇宙服って何であんな無骨なデザインなんだろうという疑問が見えてくるところが興味深い。っていうか、痒くてもかけないとは、言われるまで気づかなかった。まさに拷問。
そんな無骨な宇宙服を、どうすればオシャレで機能を損なわないデザインができるかと、ひとつひとつ考えていき、会社の先輩からの知恵を受けて、更なる成長を遂げていく過程が素晴らしかった。

最後はアレだったけど、あそこでへこたれず、むしろ次なる希望を目指していく姿が、本当格好良かったなあ。

セハット・デイケア保育日誌」が気に入ってるのは、登場した保育士・麻子のおおらかさがとても好みだったからです。様々な人種が集う島で子供を預かるというのは、難しいことがたくさんあるんですが、子供のみならず、親までも宥めていく手腕が、ほんと鮮やかなんですよ。本人も苦労したんでしょうけれど、それを感じさせないあっけらかんとした態度がいいなあ。
紛れ込んできた少年と交流を続けるうちに情が湧き、一大決意をしたことで別れることになるんだけど、でも、いつかと、そう思えるラストが良かったです。

Life me to the Moon」は、ロマンなお話でしたねぇ。とあるネタについては、初めからうっすら見えてましたが、まあ、そのあたりは読んでもらうとして、宇宙に行きたいからアテンダントになる人だっていますよね。
いや、やってしまったことはアレなんですが、女性の心情を汲み取った機長の粋な采配に惚れました。
あー、いいなあ。

トリを飾る「the Lifestyles Of Human-beings At Space」は、ほんと素晴らしかった。なぜ、という疑問の方向性を変えるだけで、こんな未来が見えてくるのか。効率というもの「だけ」を考えていたら見えない未来を、浮かび上がらせたミキの努力と、それを支えたギルバートのコンビに拍手したくなる。

最後まで意外性の女であり続けてくれましたミキですが、そんな彼女を抜擢したCEOのアリッサが、一番すごい人なのかもしれない。

いやあ、面白かった。様々な障害を乗り越えて、目標へと向かっていく女性たちの熱き思いに大満足です。
それぞれの女性が、その後にどんな未来を手にしたのか。いつか知りたいですね。

妙なる技の乙女たち - 小川 一水

妙なる技の乙女たち
小川 一水

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