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北前船始末 緒方洪庵 浪華の事件簿 / 築山桂

「章がいなくなると、寂しくなる」
「左近殿……」
左近が立ち止まって、章に向き直った。
「早く一人前の医者になって帰ってこい。そうしたら……」

蘭学を学ぶため大阪へとやってきた下級武士の緒方章と、饅頭屋の看板娘、浪華講の案内人、男装の舞楽にして、大阪の闇の守り手<在天別流>の左近が遭遇する事件簿の第二弾です。

ああ、ほんときゅんときちゃうな。たったひとりとの出会いから、自信を得て成長していく章の姿が素敵です。出会った当初は、あんなに頼りなかったのに……。学問を学ぶためにやってきた大阪で、大切な人を見つけてしまい、いかんと思いながらも、彼女に危険が迫ってると知ったら、駆けつけてしまう男心と成長っぷりにやられます。 ま、彼女を思ってる男の人がいるなんて噂を聞き及んだときには、本人に直接聞けず、でも気になるというヘタれっぷりを見せてくれてましたけどね。

左近に近づけば、闇の事件に巻き込まれやすくなる。わかっていても踏み込んでしまうのは、彼女のことを特別に思っているからですが、そんなときに彼の念願である江戸への道が見えてくるってのは、何とも言えない思いになりましたよ。夢を取るかそれとも…・・・もどかしいばかりでした。

一方の左近が章をどう思っているのかが、中々見えないのも、もどかしさに拍車をかけてくれますよね。憎からず思ってくれてはいるだろうけれど、はっきりしないし……っていうか、むしろお兄さんとか、左近の上にいる若狭あたりが、章を意外に信頼してたりして、変な感じにニヤニヤさせられたのは、僕だけじゃないはず。

それにしてもやりきれない事件が多い。悪事を働くものの、なんと狡猾なことかと悔しくなる。情にほだされたり、あるいは権力によって、やむなく罪を犯す人たちや、倒れていく人たちをみるのは辛いよなあ。病から逃れたいという心を利用するとか、もうね。

深く関わったことで、死の直前まで行き来することもあったけれど、そのおかげで、相手への思いを自覚するようになったのは、よくもあり切なくもありました。江戸と大阪は遠いよなあ。それでも夢のためにと決意した直後の悲劇は、本当に心が痛くなったけれど、でもそれを乗り越えたからこそ、彼は歴史に残るほどの医者になれたのだと思います。

僕の恋愛脳では、左近は江戸についていくというか、仕事で大阪を離れて江戸に行くんじゃないかと思ったりしてたんですが、それはないのかしら。うう、できればもっと読みたい。このふたりを見たい……

続き出ないのかしら。

北前船始末―緒方洪庵浪華の事件帳 (双葉文庫) - 築山 桂

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