「決まっているだろう。他に生きていく術がないからだ」
「え」
「いきなり何を言い出すのかと思えば―誰もが章のように心のままに道を選んでいるわけじゃない。……そういう人間もいるんだよ」
さりさんにおすすめされて手に取りました。
蘭学を学ぶため大阪へとやってきた下級武士の緒方章と、饅頭屋の看板娘、浪華講の案内人、男装の舞楽にして、大阪の闇の守り手<在天別流>の左近が遭遇する事件簿です。
これは面白い。男前の娘さんとヘタレな男のお話ってだけで、ニヤニヤさせられますが、事件を通じて、だんだんと二人の間に信頼関係が築き上げられていくのが伝わってくるともう!
特に闇のお仕事をやっていることもあって、左近は滅多なことで会いに来るなと言ってるけれど、会いに行くとなんか嬉しそうな感じがあって、かわいいなーと思ったり何だり。彼女の思いはまだわかりませんが、章のほうは、学問に集中しつつ、つい気になって……という恋心が見えてきて、大変よろしゅうございます。
そんなふたりが遭遇する事件は、公にできないことが多いですが、そんな中、感じるのは、浪華の人たちのたくましさというか、強かさです。建前と本音を使い分けて、なおその上をいく。すごいな。
きれいごとじゃすまないことや、家業について背負うものなど、様々なことが見えてきますが、時に気まずくなることもあるけれど、意地や、時にヘタレを返上するような勢いを見せたりして、ちょっとずつ男を見せてくれる章ですから、きっと……と思いたいです。
Home > 文学・歴史・その他 > 禁書売り 緒方洪庵 浪華の事件簿 / 築山桂
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