「大人にはサンタクロースが来ないなんて、誰が決めたんだよ」
金銭的なこと、そして怒らせてはいけない人を怒らせ「あのバス」に乗せられることになった星野一彦。生きて戻れるか分からないならば、付き合っている人に別れを言いたい。ただし「あのバス」には触れず — 監視役の180cm、180キロの女・繭美を連れて、五股を掛けていた男の別れ行脚物語。
『太宰治の未完の絶筆「グッド・バイ」から想像を膨らませて創った、まったく新しい物語』(帯文句)らしいです。
何この面白さ。
五股って!と思うんだけれど、女たらしとかそういうんじゃなくて、どちらかというと、目の前に困った人がいると他のことを気にしないで助けてしまい、そのまま優柔不断でずるずると……みたいな男で、五人の女性それぞれと話していくうちに、何となく彼が憎めなくなるし、また別れを切り出された人たちも、彼のことを思ってる様子が伝わってきて、少なくとも、この人たちが出会ったことはいいことだったんじゃないかなと思ってしまいます。
そう、出会いと言えば、どの人との出会いもインパクトあるんですよね。苺狩りで、というぐらいならまだしも、不知火刑事話は嘘だろと言いたくなるものがありつつ、ぐるり回って繋がるから、やられたと言いたくなる。
ちなみに、別れ話は本当のことが言えないので、すべて怪物女である繭美と結婚するから、という理由です。当然、そんな女と?という反応があり、実際、見た目だけでなく態度も傍若無人だから、そうだよねーと思ったりするんだけど、話が進んでいくと、段々彼女のことが憎めなくなってくるから不思議。まあ、本来であればお別れなんて許すわけないのに、わざわざ骨を折るんだから、どこかいい人っぽいところが……あるような無いような。
全てのお話しで、別れを切り出して、その場を辞した後、彼女たちが困っていることについて、ちょっとだけ手助けをする、その展開はとても涙ぐむものがあります。仮にこの件がなかったとしても五股ですからいつかは別れがやってきたと思いますが、別れた後もみな彼へ思いを馳せているのが印象的でした。一番楽しかったのはキャッツアイな人で、一番涙したのは女優さんのお話でした。
そして最後。思わぬ人が思わぬ行動に出ていましたが、繰り返したキックはきっと繋がったと、そう思いたい。
バイバイ、ブラックバード
伊坂 幸太郎
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