「私たち、ヒーローじゃありませんから。びしっと決めるなんてできないんですよ。かっこ悪いこともいっぱいあります。それが真実なんです。物語の中のヒーローだったら、必ず成功するんだろうけど。力が足りなくて、人を死なせちゃうことだって……」
こぼれかけた涙を、素早く手でぬぐって
「でも、やるしかないんですよね」
地震や台風と同じく自然災害の一種として、怪獣災害が存在する現代。気象庁に設置された怪獣対策のスペシャリスト「気象庁特異生物対策部」、通称、気特対が、多種多様な怪獣たちの正体を特定しながら、自衛隊と連携して対峙する作戦を描く連作短編集です。
これは面白かった。MMとは、モンスターマグニチュードを意味して、怪獣のサイズから予想される災害の脅威度を示しているんですが、かつて十四万人もの犠牲を出した怪獣災害時がMM8ですから、タイトルであるMM9といったらどれほどのものか想像できると思います。
気象庁特異生物対策部に務めてる人たちはスペシャリストと言っても、登場する怪獣は、様々なものがあって、変に先入観を持つと対処を誤ってしまう可能性があるから、被害を大きくしないよう慎重でならなければならないし、さりとて、慎重すぎたりすると、たいしたことないのに警報出しやがってという世論が出てくるから、現場は大変だなあと眺めつつ、怪獣退治模様を楽しんでました。
エビのような小さな形態がひとつの個体のように動き回る怪獣や、少女の姿をしてるけどビルより大きい怪獣、空を飛び光怪獣などなど、どんな形態なのか、どんな影響を及ぼすのか、解析していく展開はどれも面白かったけれど、個人的には少女のお話が良かった。巨大化するって何?ってのもあるけれど、人の形をしているだけで、どうしても手を出すのに抵抗があるんだけど、それでもやらねば、ってときに、気特対の元気ッ子な新人・藤澤さくらが無謀だけど勇気と温かさ溢れる決断をしてくれて……良かったと思った。刑事ドラマじゃないけれど、人情味もあるお話しが多かったと思います。
気特対のメンバーは誰も彼も魅力あるけれど、決して格好いいだけじゃなく、情けないところも見せてるんですよね。でも、仕事に対するプライドや人々を守ろうとする思いが描かれていて、けっしてヒーローじゃないけれど、でも見てる僕からするとヒーローだと思います。等身大の戦いがとても素敵でした。
それにしても、怪獣話から日本の古典に繋がるとは思わなかったけれど、ど派手なMM9に圧倒されながら、一番被害の少ない方法を考えて切り抜けた気特対の戦いに拍手!ヒメも頑張った!
MM9 (創元SF文庫 ) (創元SF文庫 や 1-1)
山本 弘
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