Home > SF・ホラー・サスペンス > MM9 / 山本弘

MM9 / 山本弘

「私たち、ヒーローじゃありませんから。びしっと決めるなんてできないんですよ。かっこ悪いこともいっぱいあります。それが真実なんです。物語の中のヒーローだったら、必ず成功するんだろうけど。力が足りなくて、人を死なせちゃうことだって……」
こぼれかけた涙を、素早く手でぬぐって
「でも、やるしかないんですよね」

地震や台風と同じく自然災害の一種として、怪獣災害が存在する現代。気象庁に設置された怪獣対策のスペシャリスト「気象庁特異生物対策部」、通称、気特対が、多種多様な怪獣たちの正体を特定しながら、自衛隊と連携して対峙する作戦を描く連作短編集です。

これは面白かった。MMとは、モンスターマグニチュードを意味して、怪獣のサイズから予想される災害の脅威度を示しているんですが、かつて十四万人もの犠牲を出した怪獣災害時がMM8ですから、タイトルであるMM9といったらどれほどのものか想像できると思います。

気象庁特異生物対策部に務めてる人たちはスペシャリストと言っても、登場する怪獣は、様々なものがあって、変に先入観を持つと対処を誤ってしまう可能性があるから、被害を大きくしないよう慎重でならなければならないし、さりとて、慎重すぎたりすると、たいしたことないのに警報出しやがってという世論が出てくるから、現場は大変だなあと眺めつつ、怪獣退治模様を楽しんでました。

エビのような小さな形態がひとつの個体のように動き回る怪獣や、少女の姿をしてるけどビルより大きい怪獣、空を飛び光怪獣などなど、どんな形態なのか、どんな影響を及ぼすのか、解析していく展開はどれも面白かったけれど、個人的には少女のお話が良かった。巨大化するって何?ってのもあるけれど、人の形をしているだけで、どうしても手を出すのに抵抗があるんだけど、それでもやらねば、ってときに、気特対の元気ッ子な新人・藤澤さくらが無謀だけど勇気と温かさ溢れる決断をしてくれて……良かったと思った。刑事ドラマじゃないけれど、人情味もあるお話しが多かったと思います。

気特対のメンバーは誰も彼も魅力あるけれど、決して格好いいだけじゃなく、情けないところも見せてるんですよね。でも、仕事に対するプライドや人々を守ろうとする思いが描かれていて、けっしてヒーローじゃないけれど、でも見てる僕からするとヒーローだと思います。等身大の戦いがとても素敵でした。

それにしても、怪獣話から日本の古典に繋がるとは思わなかったけれど、ど派手なMM9に圧倒されながら、一番被害の少ない方法を考えて切り抜けた気特対の戦いに拍手!ヒメも頑張った!

MM9 (創元SF文庫 ) (創元SF文庫 や 1-1) - 山本 弘

MM9 (創元SF文庫 ) (創元SF文庫 や 1-1)
山本 弘

東京創元社(文庫)
Amazon | bk1


関連エントリー
[山本弘] [SF・サスペンス]

Home > SF・ホラー・サスペンス > MM9 / 山本弘

Trackback:1

TrackBack URL for this entry
http://www.booklines.net/mt/mt-tb-t.cgi/3818
Listed below are links to weblogs that reference
MM9 / 山本弘 from booklines.net
MM9  山本 弘/著  東京創元社 from 西京極 紫の館 2010-06-30 (水) 22:30
【紹介文】 地震、台風などと同じく自然災害の一種として“怪獣災害”が存在する現代。有数の怪獣大国である日本では気象庁内に設置された怪獣対策のスペシャリスト...

Comment:0

Comment Form
Remember personal info

Home > SF・ホラー・サスペンス > MM9 / 山本弘

Search
お気に入り

異形の王子と毒を吐く少女の恋の物語

4048700588

他人を寄せつけぬ毒を載せた言葉を吐いていた少女が、王子と伝承と出会ったことで、信じる思いを紡ぐようになる、その祈るような思いに涙しました。懐かしき人たちとの再会もまた素敵。→感想


それは血の繋がらない家族の物語。

4048700480

大きな山や谷があるようなお話しではないんだけれど、クセのある七人のきょうだいが共に暮らすその家には、じんわり温かい家庭がありました。それぞれ抱えているものはあるけれど、この家族ならきっと支え合いながら乗り越えてくれると信じてる→感想


それは「夢利き」が語る人の夢の物語。

夢の上(1) 翠輝晶・蒼輝晶 多崎礼

最高傑作級!辛くとも好きな人と共に歩める幸せ、あるいは人の夢に乗る幸せと切なさ。独立しながら、リンクする物語は、温かさに、人を想う気持ちに満ちあふれて、胸が熱くなる。人が人と出会うことの素晴らしさは、時に眩しくもあり、切なくもなるんだなと思いました。→感想


江戸時代。新たな暦を作る偉業を成し遂げた渋川春海の物語。

天地明察

最高傑作!碁打ちであり、算術家でもある男が、打ちのめされ挫折して挫折して挫折して、でも夢を忘れられず、立ち向かう姿に、どれほど興奮させられたか、泣かされたことか!さりげなく描かれる恋も素晴らしく、読み終わりたくないとこれほど思った作品はありません。 → 感想


左遷された北嶺で隠居生活を堪能しようとした史官ヤエトの前に、皇女が太守としてやってくるお話。

翼の帰る処 上 (1) (幻狼FANTASIA NOVELS S 1-1)翼の帰る処 下 (3) (幻狼FANTASIA NOVELS S 1-2)

中間管理職的苦労に悩まされるヤエトの姿がとても楽しいですが、それだけじゃなく、北嶺と帝国の歴史的秘密が見えてくる展開に興味を惹かれること請け合い!超オススメです!→上巻感想 / 下巻感想


普通の社会人であるこかげが、異世界の騒動に巻き込まれるお話。

wonder wonderful 上wonder wonderful 下

やさしさで涙する物語でした。あ、もう最高!王宮話やら恋愛要素やらも非常に楽しく、読み進めるにつれてゴロゴロ転がりまわりたくなること必至です!今年一番のオススメ!→感想 上/ 感想 下

なかのひと

Page Top