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[菅浩江] ゆらぎの森のシエラ

金の目をした甲冑の化け物は、村長とその周りの者を殺したとき、不思議な声を聞いた。少女の声に耳を澄ますうちに、血に飢えていた心が覚め、自我を取り戻していた。俺はなぜこんなことを……。
昔のことは思い出せず、過去を奪われたことが悔しく、ならば、かなわなくとも自分を創った男に恨みを晴らしてから死のうと、あてもなく森をさまよっていたら、彼を騎士と呼ぶ少女・シエラと出会い……

塩の霧に包まれた森。生息する動植物は、異形となり凶暴化しているというキヌーヌでは、人々が化け物の姿に怯えている。そんな中、シエラなるヒロインと出会って、敵を倒すお話かと思ったら、そう簡単なものじゃないんですね。
いきなりゲテモノを食べるなんてどんなヒロインかと思いましたが、そのあたりの設定がわかってくると、大きな世界を感じます。ファンタジーなお話なんですが、こういった設定ものが SF とも言われるところかのかな(SFファンタジーなるものらしい)

徐々に魅力的になっていくシエラでしたが、途中から妙に存在感が薄くなってしまったのは残念だなあ。真実を思い出してしまった後が特にね。まあ、わからなくもないんですが。
とはいえ、シエラと金目の出会いは素敵でしたね。彼女が気がかりな存在になったからこそ、金目は化け物として生み出されたことを悔やむようになったんだろうなと思いました。このあたりの心境の変化とか描写が、繊細で素敵でした。

個人的に好きなシーンは、「待ってて」とシエラが言った言葉の意味を金目が理解していくところです。人を焚きつけるのは憎しみだけじゃない ― いやあ、いいですね。

狂女として生きてきたシエラや怪しいことこの上ない金目を、相手にするラチータも、良かったですね。世話好きで、普通の人らしい弱さもあり、それでも最後には責任感が勝る。辛くとも己の手を汚す決意、立ち止まってしまった人を動かす心からの言葉、子供たちからの信頼。この人がいたからこそ、村を守りぬけたんじゃないかと思うほどでした。
ロウゼルとの恋愛要素は、微妙だったのがちょっと残念ですが、きっと幸せになってくると思います。

ストーリィ展開はオーソドックスなものでしたが、これほどの世界を初長編で作り上げたというのは、すごいなあ。ちょっと詰め込みすぎかなと思うところもありましたが、人間の業みたいなものと、運命の出会い的なものが、素敵に描かれていました。

これはほかの作品も追いかけてみたくなりますね。

ゆらぎの森のシエラ - 菅 浩江

ゆらぎの森のシエラ
菅 浩江

東京創元社(文庫)
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