「……ミノ、勘弁してくれよ」
「心配するな。あの子は絶対入る。お前目当てだからな」
「は?」
いきなりわけの分からないことを言われて瞳孔が開いた僕に構わず、ミノはナレーションの口調で「柳瀬沙織、ライバル出現!」と言った。
「どういうこと?」
「続きはCMの後で!」
文芸部長の伊神に振り回されて、僕こと葉山が助手となり、学園内の不思議な出来事を解いていく学園ミステリィシリーズの第三弾。今回は、葉山くんが所属する美術部に、可愛い後輩が入部して……という事件簿です。五編の物語が収録されています。
- たった一人の美術部にやってきた後輩はストーカーに悩まされて……「ハムスターの騎士」
- 先生の机の引き出しにあるカードキーをすり替えろ「ミッションS」
- 演劇部の手伝いに引っ張り出された葉山の前に脅迫状らしきものが届き……「春の日の不審な彼女」
- 前の三編から繋がるもうひとつの物語「And I'd give the world」
- 伊神さんの別の顔がみられる「よろしく」
いやあ、楽しい楽しい。葉山くんに可愛い後輩ができて、また憎からぬ様子を見せてくれるんだから、ニヤニヤしてしまいますよ。ストーカーに悩む後輩を放っておけるわけがなく、解決に向けて葉山くんのみならず、演劇部が大活躍するところが楽しかった。
ま、トリックを見破ったのは、伊神さんですけどね。
事件解決したおかげで、ますます後輩がくっついてくるようになり、柳瀬先輩はどんな思いなのかってのがすっごい気になって、そのあたりもっと前面に押し出してくれれば……と思った僕がいた。部員たちはみんな気づいてるのにねぇ。「CMの後で」とか。
それにしても、今回の柳瀬先輩は大活躍だった。演劇部部長の面目も立つというものです。「声年齢チェンジ」に大爆笑させられましたけど、その他にも泣き落としから、過ちへの誘導などの迫真の演技に、わかっていても笑わされました。やっぱ先輩最高!
それぞれの事件というかトリックは、わりと小さなものだったけど、根底に繋がる動機にはびっくりでした。一本目はともかく、二本目がね。
あそこで、ただ謎が解かれただけで終わらせるのは伊神だけど、さらに関わった人に手を伸ばすのが、葉山ですよね。こういう気の使い方が、彼の人気の秘密なんだと思った次第です。
伊神さんの意外な一面もみられて、とても楽しかった。
欲を言うなら、柳瀬先輩にもうちょっと良い目を見せて上げてほしいあと思うので、次こそはお願いしたいところです。
さよならの次にくる<新学期編> (創元推理文庫) (創元推理文庫 M に 1-3)
似鳥 鶏
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