Home > ミステリー > [似鳥鶏] 理由あって冬に出る

[似鳥鶏] 理由あって冬に出る

僕の通う某市立高校には「芸術棟」なる建物があるが、その棟に「壁男」なる幽霊が出るという噂が立った。怖がる部員が増えたことで、練習が滞り始めたことを懸念した吹奏楽部の部長は、幽霊がいないことを証明するために、部員のひとり秋野と居残りをするという。話を聞きつけてきたお調子者の三野が同じように残り、棟の鍵を管理している僕も、気づけば巻き込まれてしまった。
そして夜になって再び学校を訪れた僕らを待ち受けていたのは、フルートの音色と、閉ざされた棟に浮かぶ人影で……

隠れる場所が無く、鍵がかかっていた棟のある部屋に人影が!まさか本当に幽霊?という幽霊騒動を、文芸部長の伊神がトリックに違いないと言い出して、僕こと葉山が助手となり、閉鎖空間からの人間消失問題を解明していくというお話です。

これは素敵な学園ものですね。事件を調べることになった葉山が、探偵役の伊神先輩、幽霊が現れた邦楽部の人たち、事件を持ち込んだ吹奏楽部の人たちなどに聞き込みに回ったときのシーンは、今そこに自分がいるかのごとく楽しい。どの部も部員を募集しているようで、何かにつけて葉山を勧誘するところとか、にやけてしまう面白さがあります。

自分の道を突き進む伊神先輩の行動も面白いですが、何といっても素敵なのは、演劇部の女部長の柳瀬先輩ですよね。葉山を相手に勧誘まではともかく、時々それ以上の好意を見せたりしつつ、冗談に紛らわせてしまうのは、さて彼女の本心は?といろいろ想像させられるものがあります。お見舞いイベントでは、ちょっと気恥ずかしくなるものがありましたよ。このふたりはぜひ結ばれてほしいなあ、なんて思ったり。

謎解きについては、驚きみたいなのはないんですが、むしろ、トリックそのものよりも、Whyのほうが重要かな。ひとつの答えは、青さと幸せを呼び起こしてくれましたが、それだけじゃなく、苦さまで見せてくれたところに、思った以上のショックを受けました。ただ、それを大人しい子としか印象に無かった女の子の「バカーーー」という叫びのおかげで、楽になったのが良かったです。

ああ、面白かった。探偵・ワトソンと、女の子たちの掛け合いは魅力満載でした。ミステリーだからといって敬遠するのはもったいない。toi8さんのイラストに惹かれたら、楽しめると思うので、ぜひ。
続編が出てくれたら、とても嬉しいけど、どうなるかなあ。ちょっと期待な第16回鮎川哲也賞佳作。

理由(わけ)あって冬に出る (創元推理文庫) - 似鳥 鶏

理由(わけ)あって冬に出る (創元推理文庫)
似鳥 鶏

東京創元社(文庫)
Amazon | bk1


関連エントリー
[似鳥鶏] [ミステリー]

ちなみに、著者の似鳥鶏さんは、「沙漠の国の物語」(→感想)でルルル文庫大賞を受賞した倉吹ともえさんと、大学で同じサークルだったそうです(ただし、文芸ではなく音楽サークルですけど)。
どちらの作品も楽しめたので、今後のお二方の活躍が楽しみ。

Home > ミステリー > [似鳥鶏] 理由あって冬に出る

Trackback:1

TrackBack URL for this entry
http://www.booklines.net/mt/mt-tb-t.cgi/2058
Listed below are links to weblogs that reference
[似鳥鶏] 理由あって冬に出る from booklines.net
理由あって冬に出る 似鳥鶏 from きつねの感想日記 2007-11-17 (土) 20:58
芸術棟に、フルートを吹く幽霊がでるらしい。吹奏楽部は来る送別演奏会のための練習を

Comment:2

きつね 2007-11-17 (土) 21:02

おひさしぶりです、きつねです。
楽しい学園ものでしたが、わたしはもうチョット謎解きの意外性が欲しかったです。
それでも次回作を望む気持ちを起こさせる作家さんでした。

deltazulu 2007-11-18 (日) 10:10

お久しぶりです。

学園もの部分良かっただけに、謎解き部分の物足りなさが、ちょっと目立っちゃったかもしれませんね。

> 次回作を望む気持ちを起こさせる作家さんでした。
ほんとそうですよねー。
僕も楽しみに待ってます。

Comment Form
Remember personal info

Home > ミステリー > [似鳥鶏] 理由あって冬に出る

Search
お気に入り

異形の王子と毒を吐く少女の恋の物語

4048700588

他人を寄せつけぬ毒を載せた言葉を吐いていた少女が、王子と伝承と出会ったことで、信じる思いを紡ぐようになる、その祈るような思いに涙しました。懐かしき人たちとの再会もまた素敵。→感想


それは血の繋がらない家族の物語。

4048700480

大きな山や谷があるようなお話しではないんだけれど、クセのある七人のきょうだいが共に暮らすその家には、じんわり温かい家庭がありました。それぞれ抱えているものはあるけれど、この家族ならきっと支え合いながら乗り越えてくれると信じてる→感想


それは「夢利き」が語る人の夢の物語。

夢の上(1) 翠輝晶・蒼輝晶 多崎礼

最高傑作級!辛くとも好きな人と共に歩める幸せ、あるいは人の夢に乗る幸せと切なさ。独立しながら、リンクする物語は、温かさに、人を想う気持ちに満ちあふれて、胸が熱くなる。人が人と出会うことの素晴らしさは、時に眩しくもあり、切なくもなるんだなと思いました。→感想


江戸時代。新たな暦を作る偉業を成し遂げた渋川春海の物語。

天地明察

最高傑作!碁打ちであり、算術家でもある男が、打ちのめされ挫折して挫折して挫折して、でも夢を忘れられず、立ち向かう姿に、どれほど興奮させられたか、泣かされたことか!さりげなく描かれる恋も素晴らしく、読み終わりたくないとこれほど思った作品はありません。 → 感想


左遷された北嶺で隠居生活を堪能しようとした史官ヤエトの前に、皇女が太守としてやってくるお話。

翼の帰る処 上 (1) (幻狼FANTASIA NOVELS S 1-1)翼の帰る処 下 (3) (幻狼FANTASIA NOVELS S 1-2)

中間管理職的苦労に悩まされるヤエトの姿がとても楽しいですが、それだけじゃなく、北嶺と帝国の歴史的秘密が見えてくる展開に興味を惹かれること請け合い!超オススメです!→上巻感想 / 下巻感想


普通の社会人であるこかげが、異世界の騒動に巻き込まれるお話。

wonder wonderful 上wonder wonderful 下

やさしさで涙する物語でした。あ、もう最高!王宮話やら恋愛要素やらも非常に楽しく、読み進めるにつれてゴロゴロ転がりまわりたくなること必至です!今年一番のオススメ!→感想 上/ 感想 下

なかのひと

Page Top