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[谷原秋桜子] 砂の城の殺人

母が倒れたのは、やはり父のことが心労となっているんだろう。何としても、行方不明となった父を探しにいかねば。そう決意した美波が引き受けたバイトは、二日で五万円という破格のものだった。
どんな怪しいバイトかと思ったら、カメラマンの助手だという。それぐらいならと思っていたら、撮影場所は何と廃墟。下手に動くと足を取られて、最悪死を覚悟しなければならない場所だけに怯えていたら、ミイラ化した死体を発見して……

海外で行方不明になった父を探すために、高給なアルバイトに手を出すと、甘い話には罠があるってことで、女子高生の美波が事件に巻き込まれていくお話の第三弾です。
今回はミステリの王道とも言うべき、閉ざされた山荘ものですね。唯一の道である橋が崩れて、廃墟となった屋敷の中で起こる連続殺人事件という展開には、興奮するものがあります。

毎度のことながら高給に惹かれてバイトをしたら、危険な目に遭って、やめようやめようと思いつつ、なかなか言い出せないところや、他の人に言ってもらおうと直海を連れて行くところなど、弱気な美波の性格がよく出てますよね。
このあたりを指摘する修矢の言葉はもっともですが、高校生であることを考えると、ちょっと手厳しいかなと思ってしまいます。

そんなこともあり、事件に遭遇したときの美波の脅え方といったら、足を引っ張る存在でしかないんですが、そんな中、直海が頑張ってくれましたね。死体を見ても冷静に行動し、江戸っ子チャキチャキに語られる推理などは、読んでて頼もしい限り。直海がいてくれたことは、美波にとって心強かったでしょうね。
美波と直海のやり取りは、いわば一般人の視点と探偵の視点から語られる感じなので、いい具合に頭に入ってきますね。

登場人物が少ないだけに、誰が犯人かというのは、トリックが分からなくても、自然と想像できてしまいますが、それはそれ。移動する死体、密室殺人など、いろんな要素がてんこ盛りだし、最後のほうには推理合戦などがあって、これがまた素敵に面白い。
突如登場して、いいところをすべて掻っ攫う、かのこお嬢様の自信あふれる態度には、文句なしで納得させられるものがありました。いや、間違ってたりするんですけど、いいんです。お嬢様だから。

今回は廃墟探検やら、死体遭遇やら、いろいろと怖い思いばかりで、あまりいいところがなかった美波でしたが、最後は良かったですよね。物理的な意味でなく、心で会えたと感じるシーンは、胸が熱くなる思いで一杯になりました。
どうやら、修矢への思いは自覚したみたいですし、修矢もひょっとして?と思わせる描写もあって、あーもう!とニヤニヤです。

最後の最後で父親探しにも進展が見えてきたし、これは続きが読みたくなりますね。ぜひぜひお願いしたいところです。

砂の城の殺人 創元推理文庫 - 谷原 秋桜子 (ショウコ)

砂の城の殺人
谷原 秋桜子 (ショウコ)

東京創元社(文庫)
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