「なあ常悟朗。俺は思うんだが、お前は結局、小市民じゃないんだよ」
いやあ、面白かった!一年の時を経て着地した場所は、やっぱりここだったんですね。
放火魔の追跡を、瓜野くんと小鳩くんの視点で語っていくうちに見えてくる犯人像に、ドキドキするものを感じたんのは、もちろん、小佐内さんの陰が見え隠れしてるからです。さりげない行動のすべてに意味があるように思えてしまうから恐ろしい。「あはっ」のときは、背筋が凍る思いでしたよ!
まあ、それすらも……ってのは、ほんと心憎い展開ですね。
一方の小鳩くんも放火事件を追うんですが、煮詰め方はさすがだなあと感心しつつ、やるせないのが仲丸さん話。あの状況でもにこにこできる小鳩くんは、ある意味怖かった。物事を客観的に見てしまうというのは、いいことなのかどうなのか……
小鳩くんの恋だけじゃなく小佐内さんの恋もそうなんだけど、どちらも一生懸命だったのに、一生懸命な方向がずれてて、結果として恋しきれなかったところが、小市民になれない所以なんだろうなあ。心痛むものはないわけじゃないけれど、そんな二人だからこそ、一緒にいるとしっくりくるんじゃないかしら。
最終章の小鳩くんと小佐内さんのやり取りは、ほんと良かった。何気ない言葉の中にみえる緊張感が素晴らしくて、そりゃ(言い方悪いけど)他の子じゃ代替にならないですよね。
栗きんとんに込められた意味や、最後に残された謎の答えを知るために小鳩くんが交渉する姿に、ニヤリとさせられて、ああ、楽しいなあと思ってたら、ラストでやられました。
収まるところに収まる一言が、ほんと素敵過ぎる。
秋期限定栗きんとん事件 下 (創元推理文庫 M よ 1-6)
米澤 穂信
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