「じゃあ、やっぱり別れたんだ」
「うん、別れたよ」
にこにこして、そう答える。すると女子生徒は、なにやら小さくこぶしを固めた。いったい、それが彼女と何の関係があるのか、いっこうにわからない。と、思考に入ろうとしたところ、彼女は、お昼の献立を決めるようにさらりと、こう言った。
「じゃあ、あたしとつきあおっか」
あー、失敗した。下巻が出るまで我慢すればよかった。ものすごい気になるところで終わってくれます。
というわけで、謎ときには関わらない(ようにする)小鳩君と人を恨まない(ようにする)小佐内さんが小市民を目指す青春ミステリィの第三弾。別れた二人がそれぞれ別のパートナーとつきあうことになって……というお話なんだけど、小鳩君はとても幸せそうな高校生活を歩んでいるように見える一方、小佐内さんは……。
一見すると普通に年下の男の子とお付き合いしてるように思えるのに、じわじわと真綿で首を絞めるような不安が漂ってくるから恐ろしい。何気ない誘導を感じたと思ったら、つい気になって小鳩が推理していくうちに、小佐内さんの暗躍っぷりが見えてくるからゾクゾクする。
それにしても、小鳩君は、やっぱり小佐内さんを気にしちゃうのか。
時々自分を「小市民」に誘導することはあっても、彼女と各種イベントをこなす姿は、普通の人に思えるのに。まあ、混雑するバスで目の前の座席の人が立つかとか、何も盗らなかった変な泥棒話などでは、ついつい推理しちゃって、危うい場面もありましたけど。
市内で話題となった連続放火事件にも思わず反応してるところですが、さて、この件に小佐内さんが何か関わっているのかしら。男をたぶらかして(もはやそうとしか見えない)る彼女の小悪魔っぷりを感じるだけに、大いに気になるところです。
秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫)
米澤 穂信
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