わたしの祖母、赤朽葉万葉は、幼いころから不思議なものを見る人だった。その力のせいかどうかはわからないけれど〝辺境の人〟に置き去りにされ、紅緑村に住んでいた若夫婦に引き取られたという。字も読めず、学もなく、特別美しくもない大柄な娘が、なぜか製鉄業で財を成した赤朽葉家の当主であるタツに見初められ、赤朽葉家に嫁ぐことになり……。
赤朽葉瞳子が、祖母の万葉や母の毛毬から聞いた話を元に、千里眼と呼ばれた祖母、激情を持って駆け抜けた母、普通の存在である自分という、三代に渡る赤朽葉家の激動を語る物語です。
なんてすごい物語を読んでしまったのだろうと、読み終わった直後に思いました。時代の流れに達観した万葉、時代の流れに反発した毛毬、時代の流れに迷った瞳子と、とてもリアルなのに、どこか幻想的な雰囲気を感じるところは「七竈」にも通じるものがあります。そういえば「赤」という色もそうなのかな。くっきり浮かび上がる赤色の家の物語に、いったん入り込んだら、抜け出せません。
印象的だったのは、やはり〝山の娘〟という出自を持つ万葉の物語ですね。見えてしまうが故の達観さに寂しさを感じるところがありましたが、「空を飛ぶ男」との出会いと「いじめっ子」との再会は、彼女の大きな支えになったと思います。
いわば状況に流されながらも、自分を見失うことなく、前を見続けた姿が良かったです。周囲の人との関係に不思議な温かさが素敵でした。大きなものに包まれ、そして大きなもので家族や周囲の人を包んだ、万葉の最後は忘れられません。
万葉の子であり瞳子の母である毛毬の豪快で、それでいて周囲を気遣う姿勢も心に響きましたね。おそらくチョーコの件で、ひとつ終わったところがあるのでしょう。手に入らなくても、傷ついても、ひたすら走り続けた姿は、反発だったのか抵抗だったのか。
最後の言葉と最後の姿が、唐突であり、同時にらしいなと思いました。
瞳子の物語では、雰囲気がいきなり変わってしまったため、ん?と思いましたが、最後にはしっかり繋がってくれて、これがまた見事でした。わかっていたつもりの祖母の内面に少しずつ触れて、自らを見つめなおす瞳子の姿も良かったです。
もしかしたら、万葉の言葉は、瞳子を解き放つための楔だったのかも。
戦後から高度成長期、そして石油ショックを経て現代へ至るその道のりは、地方の旧家の繁栄から、最後に至るまでの道のりと同じで、その流れに翻弄されながら、家を継ぎ、時を継いでいく物語に圧倒されました。文句なしで傑作です。
桜庭一樹はここまでの人だったのかと、大絶賛したくなりますね。
超オススメ。
赤朽葉家の伝説
桜庭 一樹
そうそう。
2007年01月12日に「赤朽葉家」のサイン会があるそうなので、行ってきます。
2007年01月12日: 追記
サインもらってきました!うれしー!!
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