「もし俺がアンタを守り切れたら、俺を第一王子候補から外してほしいんだ」
「は?」「え?」「なに?」
三者三様の声は出ていたが、全員に共通していたのは驚愕の色だ。
「ええと……君、第一王子候補なんだよね?」
山賊として育ったトゥラルクが、冷静沈着毒舌冷酷美男と思われてるヒルクィットによって第一王子候補に仕立て上げられて、仕方無しに王都を目指すシリーズの第三弾。今回は、王都で国王主催の夜会に、トゥラルクがイヤイヤ出席したら、貴族の暗殺計画を立ち聞きしてしまって……というお話。
楽しかった!トゥラルクがぽんと思いついて行動する様は、とても痛快だな!
そりゃもちろん彼は第一王子になんかなりたくないので、他の候補者に比べたらプレッシャーがないのは事実ですが、それでも身の危険は当然あるのに、危機感を感じさせず、自分なりの切り抜け方を考えていき、それが他の人の目には突拍子なく見えるから面白い。暗殺計画を聞いて、それを第一王子候補から外して貰う条件に持っていくなんて普通考えないだろうに。ただまあ、ヒルクィットを出し抜いたつもりが、そうそううまくいかず、あまつさえ利用されてしまうのはいつものことですが。
ともあれ、彼の振る舞いは当然のことながら目立ち、それでいて政治に無関心だから、周囲の人たちが何かと世話役姿も、なんだかニヤニヤだったなあ。同じ候補者であるイリハムや、帝国人であるアーミルといった同年代の少年が、彼を取り合おうとするやり取りがとても楽しい。少年たちに限らず、大人たちの中にも、彼を気に入る人がいて、男が男に惚れるってこういうタイプの人なのかもなと思う次第でした。
ワガママによって大きく後悔する羽目になる出来事があり、その上で大きな流れの中心に呑み込まれる羽目になったトゥラルクですが、読み切りの話で国王とその幼なじみが話してた通り、彼ならきっと……と思うので、乗り越えて欲しいなと思います。
それにしても、ヒルクィットの思惑がまだ見えないんだけど……なんだろう。
天涯のパシュルーナ (3) (新書館ウィングス文庫) (新書館ウィングス文庫 155)
前田 栄
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