「はぁ……。十四年も姫君をやっていて、男性にときめかないとは情けない……」
「そう言うな。現在の皇宮には思わずときめたくなるような、立派な男性の在庫がない」
養母からまで駄目押し的に何か大きくズレた擁護を貰い、アレクは立ったままドレスを握りしめた。
—この中で一番まともなのは、俺?やっぱり俺なのか?
皇宮内の様々な思惑から、男なのに皇女として育てられた「麗しの薔薇姫」ことアレク。兄たるジークが皇帝に即位したら、少年に戻れるはずが未だ戻れず、それどころかアレクの元に見合い話が舞い込んできて……という王宮ファンタジー。
これは楽しかった!
姫君の傍ら、下町で生活もしていたアレクが、時々素を出しながらお姫様を演じる様子や、アレクの異母兄ジークの柔らかな笑顔の影に隠れた怖さや、聖祓魔師たる美女・ノエルのかわいい顔してえげつない駆け引きなどが繰り広げられる王宮模様がほんと楽しい。普通の人たちと感覚のズレた会話もいいですね。
で、アレクの元に見合い話がやってきて、断ること前提で相手のいる街へ赴いたわけですが、そこではなんと吟遊詩人の祟りと思われる事件が連続していて……というお話が始まるわけですが、見事解決していく様をみてると、こいつら(除くアレク)を敵に回しちゃいけないと思いました。
真相の一端には恋する思いが隠されていて、なかなかやりきれないものもありましたが、それでも道を踏み外さない人のほうが多いということを忘れてはいけませんね。
本作には上記の「万人に愛された者」のほかに、猫好きの藤花選定候の愛猫が行方不明になった「女王様のご来臨」と、ノエルの恋心を描く「花嫁落第……?」が収録されているんですが、なんと言っても素晴らしいのは、「花嫁落第……?」です。好きな人が目の前にいるのに、ついつい反抗してしまう乙女心をたっぷり見せてくれるノエルのかわいさといったら!思わずゴロゴロと転げ回りまくりましたよ。墓穴掘っちゃって、青ざめたりする様子にニヤニヤが止まらない。
どうやら、師兄たるギィは、なかなかに鈍そうなので大変かもしれませんが、周囲を味方に付けて、ぜひともがんばっていただきたいものです。応援するからね!
あー、楽しかった。これはぜひとも続編をお願いしたいところです。アレクの話もいいですけど、ノエルのお話もぜひ!
姫君返上!
和泉 統子
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