「あの子は私が助ける。詳しい状況を教えろ。あの子は誰だ?名前は?歳は?どこに住んでる?」
「助ける?あんたが?なんでだよ」
「君こそなぜあの子を探そうと思った?スクープのためか?だが、できれば助けたいと思ったからこそ行動したのだろう。私だって同じだ。だったら教えても君に損はないはずだ」
「わたしと一緒にお空を飛ばないかい?」――持ち前の好奇心からタブロイド誌の記者になろうと、日々特ダネを探しているコリンは、公園で幼い子にばかり声をかける綺麗な男を見かけた。ちょうどそのころ幼児誘拐事件が発生していたことを知ったコリンは、その男の後をつけてみたら……謎の男キャスパー・ランプトンと好奇心旺盛なコリンが繰り広げるロンドンミステリー。
好奇心やら正義感やらいろいろ入り混じったものから、キャスパーを追うのはともかくとして、黙って人の家に忍び込むのはどうかと思ったけど、なんとなく目が離せないのはわからなくもない。絵になるってのもあるけど、雰囲気ありますもんねー、キャスパーは。
とはいえ、所謂、人外なので、目立つことをすればどうなるかってのは予想がつきますが、ひょんなことから、コリンがルームメイトの女刑事カッサンドラから秘密裏に教えてもらった幼児誘拐事件のことをキャスパーが知り、コリンと手を組んでいくところに、ああなるほどと思うものがありました。いつしか足繁く通うようになったコリンとの間に生まれる空気がいいですよね。
「人間なんぞ」という意識を持ちながら、かつて共にいた人を忘れられない矛盾した心を持っているキャスパーが、再び人間との間に関係を持つことになる、その描写が素敵です。
さらには事件を追うに連れて、「わたしと一緒にお空を飛ばないかい?」の答えが垣間見えるところににやりとさせられました。出会うべくして出会ったってことですか。
この出会いがあれば、いつかきっと、ランプトンの呪いも解けてくれるんだろうなと、そう思いたくなりますね。
本作は、キャスパーとコリンが出会った幼児誘拐事件の顛末が描かれる「その男キャスパー」の他に、「隣は何をする人ぞ」が収録されています。これは、コリンが住んでるアパートの住人たちの紹介みたいなお話かな。ルームメイトで恋人未満というか、なんとも微妙な関係のカッサンドラ、元大女優のドロシー、引きこもりのエレン、日がな一日階段から下の様子を伺っている覆面作家トッド、気はいいけど腕は最悪なコックのアーウィンといった住人たちが登場するとある一日を描いたお話ですね。
今回はトッドのお話が中心となってましたが、トッドの苦悩にチラッと光を差し込んだコリンににやりです。これは他の住人たちのお話も読んでみたいですね。特にエレンが何やってるのか気になります。
竜の夢見る街で 1 (ウィングス文庫) (新書館ウィングス文庫)
縞田 理理
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