ジョエルへ
どうかこんな形で局を去ることを許してほしい ―。
マーメイド、スフィンクス、ミノタウロスなどといった≪神話的人類≫との融和を宣言したブルームフィールド市で、犯罪捜査局の捜査官になったジョエルが、ひねくれものなヴァムピールのカートとコンビを組んで、《神話的人類》絡みの事件を描くシリーズの最終巻。ジョエルに対して、血の渇きを抑えられなくなってきたカートが姿を消して……というお話。
初めに見せられたジョエル宛の手紙を読んだら、今までうっすらと見えていたカートの気持ちが見えてきて切なくなりますが、逆に、ジョエルは自分に自信をなくしたんだろうなあ。でも、そんなジョエルをけしかける……というと言葉悪いかもしれないけれど、あれこれと言い訳しながらカートを連れ戻すための理由をつけて、ジョエルを送り出そうとする風紀係のみんなが好きです。
で、カートを探すために彼の故郷へと向かっていくんですが……カートの実家が花を売ってたとは思わなかった。けど、吸血鬼って、何となくそういうイメージあるよねー。血を吸うってことがどこか官能に響くからなんだろうけれど、からかわれて大慌てするジョエルが面白い。
それはいいとして、カート君。戻りたいのに戻らないって言い張るところが素直じゃないですが、でも、やっぱり自分の好きな人たちをもしかしたら傷つけるかもしれないと思ったら、やっぱ躊躇しちゃうのはわかります。こればっかりは、致し方ないかと思ったけど、でも、そんな弱気なカートに告げた、ジョエルのまっすぐな言葉が、っても良かったです。初め《神話的人類》に怯えていた彼だからこその言葉ですよね。
一方、異変を察知したところで、カートの父親が登場したんですが、これがまた人を食ったような、つかみ所のない人で、たぶん議論を交わしてたカートやカートの母は、いらつくところがあったと思うけど、父親らしいというか、妻や子に対する愛情はあるんですよね。軽いから伝わりにくいけど、それだけに本音が見えると、温かい気持ちになれました。
ただ、《神話的人類》と人間の関係は、決して良好にはなっていかず、むしろ、神たるフェイブスのおかげで、ますますやばい状況に……と思ったら、まさかそんな手でくるとは思わなかった。でも、ある意味、あれは一番の方法ですよね。神じゃなきゃできないことだけど、一度体験したら、間違いなく考えるでしょうから。 普通は怖いと思うであろうことだった「波」を、楽しめるジョエルが好きですね。
いやあ、面白かった。
個人的には、エピローグとなった十年後の物語をもっと読みたかったなあ。っていうか、ミリシャとの恋話が見たかったのに、まったく、これだけの月日が経っても、いまだプロポーズしてないんだから、不甲斐ないなあ、ジョエル。と思いながら、変わらない人たちの様子に満足。
モンスターズ・イン・パラダイス 3 (3)
縞田 理理
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