「……サイレンは《特定危険種族》に指定されている。サイレンの歌には魔力があり、人間の精神に重大な影響を及ぼすと考えられているんだ。サイレンが人前で歌うことは重罪なんだよ」
「サブリナの歌は、魔力なんか関係なく素晴らしいじゃないですか!」
「君がサブリナの歌を素晴らしいと思ったこと自体、魔力のせいじゃないって証明できる?」
マーメイド、スフィンクス、ミノタウロスなどといった≪神話的人類≫との融和を宣言したブルームフィールド市で、犯罪捜査局の捜査官になったジョエルが、ひねくれものなヴァムピールのカートとコンビを組んで、《神話的人類》絡みの事件を描くシリーズの第二弾。今回は、以下の三編が収録されています。
- サイレンの歌声で人を惑わせた?十字路亭のウェイトレス、サブリナの逮捕劇を描く「三十二分の一のサイレン」
- 獅子神殿のメイドのミリシャが、殺人事件の第一発見者にして容疑者になる「赤革の手帳」
- 同郷の人間に付きまとわれたホープの元に上司であるカートがやってきて……という番外編「クリームソーダ・ウォーズ」
ああ、ホープはほんといいやつだなあ。元よりお人好しで、仕事にも忠実だから、《神話的人類》と出会っても、偏見を持たないようにと努めてるんだけど、ふと無意識のうちに、そういった視線を見せてしまうことがあったとき、しっかりと悔い、それを改めようとする姿勢が、とても好感をもてます。
種族が違うのだから、当たり前のことが異なるのはあると思うけど、それを受け入れようとする姿勢が見えるから、いろんな人たちに愛されていくんだろうなあ。カートの試練(というなの意地悪)で、突如《神話的人類》の婚約パーティに参加させられたときの言葉が素敵でした。
ただまあ、すべての人がそういう思いを持つわけではなくて。
歌いたいという思いから、サイレンであることを隠していたサブリナが逮捕されてしまう「三十二分の一のサイレン」なんて、サイレンの歌声は人を惑わすということに、根拠がないというのに、人間たちの融通の利かなさに、あー、もう!と苛立ちましたよ。
まあ、それだけ、何ら「力」を持たない人間は、《神話的人類》に対して、畏怖の念を持っているという現われでもあるんですけど。
さっそうと登場したヴァムピールの弁護士デヴローが賭けに勝ったおかげで、なんとかなったものの、逆に人間と《神話的人類》の壁の厚さを思い知らされるような判決に、つらいものがありました。
思わず、先走ってしまうホープの気持ちもわかるけど、そんなホープを諭したカートの気持ちに、思わずにやりとしてしまう。ああ、やっぱりカートにとって、ホープは大きな存在になってきてるんだなあ。
ひとつ解った気になったら、またひとつ大きな衝撃があって。ホープがほのかに思いを……?なミリシャの過去が見える「赤革の手帳」は、「血親」のないまま転化してしまったが故の辛さがたまらなかったです。かの種族に向けられる視線の冷たさは、尋常でないものがありますね。
下を向くような生活を続けていたミリシャが、ようやく前を向いたときに、悲劇が待っていたんですが、まさか別方面にまで火の粉が飛んでくるとは思わなかった。
ミリシャ話で、またひとつ思いを改めたホープですが、恋話に発展するのかどうかとわくわくしてたのに、カート問題の勃発にふっとばされました。しかも、ここで終わるなんて!
カートの秘密というか、《はじめのひとり》の謎とと共に、続きが気になって仕方ないです。
モンスターズ・イン・パラダイス(2)
縞田 理理
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