体内に取り込むことで、様々な力を発揮する「宝印」の使い手となるため、奴隷上がりのノエルは、差別されながらも、卒業試験までたどり着いたが、結果は、不合格だった。間違いなく点数は取れていたのに。ここでも差別の壁があるのかと怒り心頭したノエルだが、校長に呼び出され、同じく不合格だったウィリップと共に、封印された宝珠の名前を調べるという追試を受けることになったが……
奴隷制度が廃止されて十四年、いまだ差別の目は消えていないガルビア帝国の宝印学校で、卒業試験の追試を受けることになったノエルとウィリップが、帝王の暗殺事件に巻き込まれて……というお話。
大貴族の息子ティフェールとティフェールの父のご落胤のノエル、気弱だけど心優しいウィリップの三人が繰り広げる物語なんですが、いやあ、明るくて楽しいお話ですね。いや、差別の残る社会のため、ノエルには逆風ばかりなんですが、折れること無く、なにくそと立ち向かう姿がいいです。たまに突っ走りすぎることもあるんですが、犬猿の仲でありながら、どこか認め合ってるティフェールや、足を引っ張っているようで、いい位置にいてくれるウィリップがいてくれて、この三人だからこそ、危険を乗り越えることができるってところがいいなあ。
帝王暗殺を防ぐ「宝印の騎士」は、比較的オーソドックスな展開でしたが、続く「金色のウサギと消えた死体」が素晴らしかった。何としても、貧民の出であるノエルに宝印使いの座を与えまいとして、権力を持つものが手を回す中、宝印学校を共に卒業した生徒が殺されて、しかも犯人として、ノエルやティフェールが疑われていくという展開。
嫌いあいながら気になる相手として描かれていたノエルとティフェールが、だんだんと憎まれ口を叩きあいながら、認め合うようになってるところがいいですね。まあ、この二人が喧嘩するとウィリップが泣いちゃうから、ってのもあるんですけど。一番弱そうに見えて、ウィリップに振り回される二人の様子が面白おかしいです。何気に一番強いのは、涙で押せるウィリップかもしれない。「少年」という描写があったにもかかわらず、涙がかわいかったおかげで、僕の脳内では少女に変換されていたのは内緒。
ミステリー展開が繰り広げられる中、自身の黒い感情に気づき、そのことを悔やむノエルが印象的だったなあ。粗雑な感じこそあれど、まっすぐな子なんですよね。不審人物(いい人)の温もりや、優しく側にいてくれたウィリップの心が、またひとつ、彼を成長させたんだろうなあ。
ウィリップといえば、はじめてノエル、ティフェールと出会ったときの短編「二枚の受験票」も収録されてます。ふたりに声をかけるのに三年も要したりするところに、ウィリップの気弱さを感じますが、家族の温かさが伝わってくるお話に、にこにこです。ちょっと恥ずかしいかもしれないけれど、いい家庭ですよね。
いやあ、面白かった。考えてみたら、剣での戦いとか、恋愛要素とか、まるでないんですが、それでも引き込まれる面白さがありました。これはぜひとも続編が読みたいですね。期待して待ってようっと。
宝印の騎士
西城 由良
巻末マンガのチェッツが可愛すぎてどうしてくれよう。
関連エントリー
[西城由良]
[宝印の騎士感想一覧]
[ウィングス文庫]
[ライトノベル]
Trackback:0
- TrackBack URL for this entry
- http://www.booklines.net/mt/mt-tb-t.cgi/1869
- Listed below are links to weblogs that reference
- [西城由良] 宝印の騎士 from booklines.net







