「あなたはくだらないと感じるかもしれないけれど、何年も後になって一番なつかしく思い出すのは、そのくだらない時間なのですよ。鍵を外し、扉を開きなさい、チェチリア。孤独な魔女は、善き魔女になれません」
母が最後に告げたのは、借金があること、父には伝えないで、ということだった。幼い頃から優秀な魔力の持ち主で、名門・聖エレオノーラ女学院の歴史の中でも群を抜いた才能の持ち主であるチェチリアが、皆に内緒で借金返済のために日夜努力する物語です。
これはもどかしく、楽しいお話でした。
「魔女の戴冠」(→感想)シリーズの番外編ですが、本編を読んでいなくても楽しめると思います。もちろん、読んでるほうがより楽しめますが。あの騒動の時、チェチリアはひとりでこんな苦労してたのね、みたいな感じで。
ともあれ、細かいことを気にしない陽気な母と、ケーキ作りだけが自慢の父のおかげで、自家製ケーキ15万個分の借金を十一歳の女の子が背負うことになるんだから、大変なんですが、自分の才能を自覚して魔法学校を卒業して一流になれば返済できると、計算していくから可愛げがないというかなんというか。
借金取りであるエドが、ちょっと優しい言葉をかけても、固くなに突っぱねるあたりは、本人真面目なんだけど、妙にユーモアを感じてしまう僕がいました。 エドについては、途中でアレ?って思うけど、チェチリアが気づかないのは、先入観ってやつなんでしょうね。
もともとの性格+借金の工面に焦るお陰で、成績優秀であっても、友人と呼べる人はなかなかできなかったチェチリアですが、彼女の支えになったのが、我らが大先輩オルテンシアであったことにニヤリニヤリでした。始めっから留年で登場して、ああ先輩だと思ったけど、なんだかんだ言いながら、彼女のような人が傍にいたことは、きっと院長先生のいうように、思い出となって輝いたと思います。彼女自身わかっていたからこそ、最後に……ね。
借金をかえすということばかり考えていて、将来どうするかという目標についてはまるで考えてこなかったチェチリアが、ふとしたことから祖母の足取りをたどり、彼女の見た景色を見て行くうちに、ちょっとずつ心を動かして行くところがとてもよかったなあ。
つっかかっていたエドに対して、ふいに出た「ありがとう」に萌えて、ぐっすり眠れるはずのホットミルクでドキドキになり、そして近づくとうっとおしく、離れると寂しい、そんな気持ちを自覚した彼女が、そっけなくも真剣に決断した言葉に嬉しくなりました。
魔女の戴冠―ラ・ドルチェ・ヴィータ (幻狼ファンタジアノベルス)
高瀬 美恵
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