そなたはわたしの副官だぞ。そなたが帰るべきは、どこぞの土地ではない。当然、わたしのもとへ帰るのだと心得よ。よいな?
北嶺という名の放置区へ左遷されたことを、楽な隠居生活ができると喜んでいた病弱な史官ヤエトの前に、皇女が太守としてやってきて……。上巻では、北嶺の民と皇女の間に挟まれて悩まされるヤエトでしたが、下巻では、太守の命により、療養として都の第三皇子の元へ預けられたら、知らず知らずのうちに、皇位継承権をめぐる争いに巻き込まれてしまうお話になっていきます。
いやあ、面白かった!療養と称して都へいったのに、皇位継承権をめぐる争いに巻き込まれて、気苦労耐えない毎日を送る羽目になるあたり、相変わらず可哀相だなと思いながらニヤニヤです。
ただ、本人にその気はまるでないとはいえ、皇女が副官たる地位のものを大切に扱ってる様子を知ってしまったら、周囲の人からいろいろ想像されても致し方ないところだとは思います。おかげで、念願の隠居生活をすることになったものの、強制的になってしまったおかげで、かえって動かざるを得なくなるあたり、皮肉なものですね。
まあ、実情を知っていても、皇女との秘密のやり取りを見ていると、ほほえましくも怪しく見えてしまいますけど。皇女の伝達官は、どれだけの思いを感じることができたのかすっごい気になります。
それにしても、下巻で印象に残っているのは、帰らねば、という思いをヤエトが抱き始めるところですね。それまで死というものが身近にあったせいか、自身の体のことを頭の片隅に追いやることの多かった彼が、戻るまでは死ねないと決意するところに、彼の責任感と、皇女への思いを感じます。まあ、朴念仁なんで、そこまでは考えてないんだろうけれど。
都と北嶺の距離は決して近いものではなく、上巻であれほど魅力を放ってくれた皇女の出番が少なかったことは、個人的には物足りないものがありましたが、それでも、ヤエトの思いから皇女の姿が見えて、存在感が薄れることがなかったのは良かったです。あの思いがあったからこそ、呪師に術により錯乱しかけた皇女を救うことができたのだと、そう思いました。
北嶺にせまる危機を、ヤエトの恩寵の力と皇女の竜種としての力で打ち払っていくところは、もうすばらしすぎです。なんて美しき呪なんだろう。「翼の帰る処」の意味が見えてくる展開に感動させられました。
最後にまた皇女が可愛い姿を見せてくれるんだ。皇族にあそこまで言葉をつむがせるとは、なんたる不敬なやつなんだろうとニヤニヤしながら読んでました。いったいこの二人はどうなっていくんでしょうね?と思っていたら、あとがきによると続編の構想があるそうです!うれしい!
今から楽しみでなりません。
翼の帰る処 下 (3) (幻狼FANTASIA NOVELS S 1-2)
妹尾 ゆふ子
上巻に引き続き、著者である妹尾ゆふ子さんがブログで感想用エントリーを立てておられるので、読了した人は、コメントやトラックバックを寄せるといいかも。
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