「好きなの?」
え、と思った。多分顔に出ていた。それを見てとったのか、雪枝さんは畳み掛けるように言った。
「違うでしょ?」
中学二年生の夕陽は、担任の先生の高校時代の同級生だという雪枝と出会い、彼女と連絡をとりあうような仲になった。他愛もないやり取りを経ていくうちに、女を意識しはじめるが、雪枝の家には十五歳の時に拾われて四年経つ男・聡が住み着いていて……というお話。
読み始めたときは、ちょっぴり危ないアバンチュールになるのかとおもったら、歪んでた。中学生と交流するまではともかく、自分と聡の関係を見せつけるとか、何を考えてるのかと思ったんだけれど、それぞれの微妙な壊れ具合を見ることができてから、どう動いていくのか興味を惹かれました。
わかっていても止められない雪枝には、「特別」なことを目指してしまう過去があって、そんな彼女の側にいながら気づけなかった聡もまた傷ついた思いがあったけれど、夕陽という存在が、彼らが目を背けていたところを露にさせたところは良かった。
ある意味、貧乏クジ……というと語弊があるか。彼自身、誘惑されたらそりゃついて言っちゃうぐらいの健全さはあったけれど、同時に清潔さを兼ねているのが思春期ってやつなんじゃないかな。雪枝に惹かれる思いもありつつ、かつてのクラスメイトをもう一度見つめ直すことができたのは、夕陽にとっても良いことだと思いました。
「りんご」の話は、心の中でころころと転がしたくなりますね。
陽の子雨の子 (幻冬舎文庫)
豊島 ミホ
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