「死にたい」
その四文字は、紛れもなく私の書いたものだった。ああ、と私は合点する。
……そうか。私は死にたかったのか。
生まれながらにして、人を狂わすほどの美しさを内包していた少女。男たちの欲望に穢され、それでも生きてきたのは……春がくる度に思い出す、制服の下に隠された傷だらけの少女の物語です。
少女に懸想して狂った教師、夫との愛を取り戻すため春を売る妻、海に消えた少女の担任をしていた教師といった具合に、初めの三編は、少女の周囲にいる人たちの視点から語られるお話で、独立した話でありつつ、ほんの少しリンクしてるなと思ってたんですが、残り三編を読むと、がらっと変わってきます。
それまで朧気ながら見えていた少女が、どれほどの絶望を抱えながら、それでも生きてきたのかが切々と語られて、胸が痛くなる。大人になるまでの時間とは、なんと長いんだろう。
彼女を唯一見つけてくれた少年や、彼女を匿ってくれた男など、彼女が側にいて欲しいと願った人たちは、みな離れていき、それでいて生きて欲しいと望まれたことは、どれほどの絶望だったことか。
死にたいと思いながら死ぬことができない。守って貰うためなら、身体を切り売りすることもいとわず、復讐という目標を見つけたのに、そこでさえ、あんな思いを抱くようになるとは……。人の想いとは分からないものだと、痛感させられました。
心だけじゃなく、身体までいたくなるようなお話でしたが、読み終わったときに感じたのは、深い愛でした。なんかすごいもの読んだと思う。
春狂い
宮木 あや子
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