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[小川一水] 煙突の上にハイヒール

「……思い出を味わおうとしたのね」
「思い出も、後悔もです」
「後悔があるんだ。ロボットなのに」
「ロボットだからこそ、後悔があるのです」

個人用ヘリコプター、介護用やホームヘルパー用のロボットが当たり前になる、そんな近未来を舞台にして、人の思いを描いた切なくも温かい短編集です。

  • 一人乗りの空飛ぶ機械Mewにハマった女性を描く「煙突の上にハイヒール
  • 飼ってる猫が太ってきた。誰が餌をあげてるんだとカメラを仕掛けたら……「カムキャット・アドベンチャー
  • 雪の日のオープンカフェで介護ロボットと相席になった女性の思いを描く「イブのオープン・カフェ
  • ホームヘルパー用ロボット作成を通じて、思いを伝える「おれたちのピュグマリオン
  • 臨時扶養者特別措置法により、疑似家族となった男と少女を描く「白鳥熱の朝に

登場する人たちは、どこか寂しさを抱えているんだけど、時代時代のアイテムが寂しさを紛らわせて、浮上するきっかけとなるお話がいいですね。時代が進み、技術が進んでも、人の思いは変わっていかないんだろうなあ。

個人的には、空を飛ぶってだけで、表題作の「煙突の上にハイヒール」が好きなんですけど、いいですよね。早く飛べるわけじゃない、便利なわけでもない。でも空へいける。ハマっていく気持ちが分かるなあ。
もちろん、彼女からすると逃避の思いがどこかあったから、なかなか人に言えなかったんだろうけれど、語れる同僚がいて、出会いのきっかけとなって、という展開はよかった。このあときっと夫婦で……ね。

恋愛ものとしては「カムキャット・アドベンチャー」がよかったな。
何を食べてきてるのか猫にカメラをつけたら、餌をあげてるのは女の人で……というお話。盗撮だから罪悪感を持ちながらも、なんとなく気になってみてしまう男の気持ちがわかるなあ。猫の生活模様も若干みてるけど、主人公の思いは……ね。
相手が誰かはわかってて、話すきっかけはあるんだけど、なかなか一歩踏み出せない男心にニヤリとさせられる。仕掛けたカメラが思いも寄らぬものを映して、そこで知らされた真実にもまたニヤリ。
建前は猫に会いに、っていってるけど、きっと……ね。

個人的に好きなお話は、「イブのオープン・カフェ」。雪の降る夜に、わざわざオープン・カフェの席に座るってことから、彼女の心情が伝わってきますが、帰宅途中の介護ロボットが一時的な休憩をするために、彼女と相席して話をするシーンは、心にくるものがありました。
好きな人がいる嬉しさ楽しさ、すれ違うことの寂しさなど、雪の寒さが切なさを感じさせるお話でしたが、ロボットならではの温かさに、きっと彼女は立ち直れると、そう思う次第です。

ほかの話もよかったけど、全部書いてると長くなるのでこのぐらいで。
重すぎず軽すぎず、読み終わった後には、なんか前を向きたくなる、そんな心地よさの短編集でした。

煙突の上にハイヒール - 小川 一水

煙突の上にハイヒール
小川 一水

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