長年勤めていた銀行を辞めたが、次の職の当てがない。
家族の目が気になり、次の職までの場つなぎでタクシードライバーとなった伸朗。
簡単だと思っていた仕事だが、まるで成果があがらない。
大手銀行のかなり上までいった自分がこんなところでくすぶるなんて。
そんなおりに大学の同窓会の知らせがきた。
あのころの恋人であった恵美はどうしているだろうか……
自分はこんなところで過ごす人間じゃないと妄想に明け暮れる主人公を、始めはなんて情けないんだろうとイライラしましたが、これは同じような目にあったら自分も同じことをしそうという、ある意味、同属嫌悪なのかもしれない。
もう一度人生をやり直せたらとか、失ったものは今よりいいはずとか、そう思う気持ちはよくわかる。
でも本当にやり直したいのか、というところに疑問をもったところがよかった。
もう一度人生をやり直せたら―
甘美な言葉だが、きっと夢想するだけだからいいのだ。本当にそんなことが現実になってしまったら、たまったもんじゃない。どんな中身の積み荷だろうと、一度積み上げた荷物をもう一度、最初から積めと言われるのと同じだ。
たしかに何度も繰り返したいことではない。
過去を振り返り、少しずつ現実に戻ってくる展開が見事。
お父さんが邪険に扱われるという家族でも、実は支えられているんだなという描写が素敵でした。
第134回直木賞候補作。
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荻原浩
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