「仰せの通りでございます。マリア様」
と、十四人の女たちはいっせいにいって拝礼した。
「爺がわたしやそなたらに、大友の忍法を仕込んでくれた苦労が、いま無駄でないときがきた。わたしたちはたたかわねばならぬ。鈴はまもりぬかねばならぬ」
他にこれほど冷たい女の声があるだろうか。霞から氷のような声がはながれた。
「そのために、わたしたちは、御教えの慈悲は、一切すてねばならぬ」
体内に鈴を隠す十五人の女切支丹。百万エクーの金貨の行方が記されているという鈴を手にするために、老中・松平伊豆守は天草家の再興を望む伊賀忍者を、虎視眈々と添加を狙う由比正雪は手買いの甲賀忍者を放ったが、十五人の童貞女もまた尋常ならざる忍術使いで……15人×15人×15人の三つ巴で繰り広げられる死闘が描かれた物語です。
いやあ、すごい。ほんとすごい。
総勢45人を超える忍者が登場して、顔を合わせたらバトルが始まり、お互い技を繰り広げるときもあれば、名乗りを上げただけで倒される人もいたりと、次々に脱落していく展開は見応えありますね。
「甲賀忍法帖」や「くノ一忍法帖」に出てくる忍法を見かけることができると、ああ、脈々と受け継がれてるんだなあなんて思いがあったりして、ちょっと嬉し……い感情なのかわかりませんが、にやりとするものがある。
誰もが一般人の顔をしてるから、巻き込まれた人と思ってたら実は……、なんてのは当たり前だし、相手を潰し合わせようとして画策しまくってるから、油断も隙もありゃしません。
そんな中、一番印象に残ってるのは、好いた男の敵にならねばならなかった童貞女の一人の思いですね。マリア天姫に投げかける彼女の言葉を聞いてしまうと、やるせなくなる。
忍者が倒れていくごとに鈴の音が鳴り響き、そして最後に鈴を手にするのは……ってところで描かれる最後の闘いとも言うべきシーンの見事さと言ったら!ああ、このためにあの忍法は進化したのかと思いました。
さらに、最後に思い返させられるジュリアンの予言の言葉。その台詞の恐ろしさに戦慄が走ります。
ここまで考えられていたとは……恐るべし。
外道忍法帖―忍法帖シリーズ〈2〉 (河出文庫)
山田 風太郎
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