終わりのない冬の凍土の中を、休むことなく歩き続ける巨人「ミール」。その背に都市を作り、人々は暮らしていた。ディエーニン教授の助手として、ミールを調査をしてきたオーリャは、ある日、ミールを空から確認するという調査として、ひとり気球に乗って飛び出していったが、そこで一人の少女と出会って……
生きているのかはわからない。どういう動力を持って動いているのかもわからない。七昼夜に一歩あるくという、人の形をした巨大な「ミール」を調査していくうちに、ある事実が浮かび上がって……というお話ですが、これはいいですね。何気なく描かれている街の様子がとても映えて、とても素敵なんです。
鉄とセメントの構造物、低い雲、黒い煙が立ち込めている外市民の暮らす場所と、暖かく色鮮やかな内市民の暮らす場所。頭の中に映像として浮かび上がってきて、素晴らしい世界観と相まって魅了されました。
個人的に印象的なのは、オーリャがはじめて「雲の上」出たときのシーンですね。あまり大きな感情の起伏を見せないオーリャが、喜びを、勇気を、生まれてきた意味さえも感じてしまうぐらい、感動して雲海を眺めるところは、自分でも見てみたいと思ってしまいました。
巨人について、調査をしていくうちに、ひょっとして……と思わせてくれるところが出てきたり、それが裏づけされていくところは、何とも不安を誘われました。いつか、がすぐそこにある危険性って、わかっていても認めたくないんだろうな。
レーナという不思議な少女と出会い、彼女の存在こそが、今、ミールに住んでいる人たちを救うのではないかと動き出すところでは、希望を目指すものと、今までの存在にしがみつこうとするものの対立として、ハラハラさせられるものがありました。欲を言えば、このあたりは、もうちょっといろいろ合ってくれたら、と思わなくもなかったです。
いろいろと不穏なものを感じさせてくれましたが、それもこれも、あのラストを演出するためのものだったんでしょうね。
「トモダチ」という言葉に驚かされて、包まれる光の意味に、新たなる一歩に、たどり着いた「冬の果て」に、じわりとさせられるなんてもんじゃなかったです。ジェーニャの興奮する言葉と同じぐらい感動させられました。ほんと、すばらしかったです。
「ジブリ作品のような」という感想をネットで見かけましたが(どこだか失念)、ほんとジブリで映像化してほしいなと思いましたね。そういった雰囲気が好きな方なら、ぜったい気に入ると思うので、ぜひ手にとって見てください。
激しくオススメ。
冬の巨人
古橋 秀之
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