「たった一文やけど、重い一文やと思ってます。うちらは、この一文が子供らがこの先歩く道に小さな明かりを灯すことを信じて、一文稽古を続けてるんです」
お香、お涼、お美和の三姉妹で切り盛りしている寺子屋「三春屋」は、貧しい家の子供のために、夜に一文稽古を行っている。ある日、三春屋の裏に住む佐十郎を訪ねてきた娘・お鈴が「親の仇を討つ手助けをしてほしい」と頼み込んできたが、主家に認められない仇討ちは許されるものではない。佐十郎を心配するお美和たちだが、そんな折にお鈴の兄が三姉妹の次女・お涼の通う塾の前で殺されて……というお話。
とてもよかった。タイトルの意味が見えたところにじんわりきた。寺子屋として昼間は昼間でいろんなことがあるんだろうけれど、身分や年齢関係なく集まる一文稽古は別のものがあるなあ。たぶん、その場にいるだけで、多くのことを感じ取れると思う。仇討ちしか目に入っていなかったお鈴の最後の行動は、間違いなく、一文の明かりを見たからだと思います。思わず自分の背筋が伸びてしまいましたよ。
それにしても、今回はいろいろな人の揺れる思いが見えたなあ。特にお美和。佐十郎のことを気にして、ついつい長屋の奥を見てしまう彼女は、お鈴がやってきてからやきもきしまくりで、ニヤニヤしちゃう。たぶん佐十郎は無意識なんだろうけれど、お美和が喜ぶようなこと言っちゃうからまた大変。一喜一憂……というには、沈んだ思いのほうが多かったように思いますが(事件のことがあったからね)、ちょっとは気づいてあげてよ佐十郎と言いたくなる。
お姉ちゃんたちは末っ子の思いに気づいていて、さてどうしよう状態になってましたが、次女たるお涼も……ね。彼女の場合、学ぶことが最優先で、そのためになるべく目立たぬよう過ごしていたのに、事件によって浮ついた空気が、変な方向から彼女を責めてきて、思わず涙をこぼすシーンには、こちらまで悔しくなったけれど、姉や妹の支えを感じるところがとてもよかったです。いつまでも今のままでいられないのはわかっているけれど、それでも……と願う気持ちが、切なくも良くわかる。
そういえば、慎介がお涼にモーションかけてるけど、このあたりどうなるんだろう。草太の面倒を見るところとか、いい若旦那だよなーと思うけど……嫁ぐとなると、それはまた別の話になっちゃうか。
ともあれ、次がどんなはなしになるのか楽しみです。
闇に灯る―寺子屋若草物語 (徳間文庫)
築山 桂
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