「山は近寄りがたくて恐ろしいばかりじゃない。だれも見ていなくても、こんなにきれいなものを、毎年ちゃんと実らせる」
高校卒業後、何の進路も決まっていない平野勇気は、三重県の山奥にある林業に従事する神去村に放り込まれた。携帯の電波も繋がらない村で、勇気は見習いとして働くことになったが……というお話。
これは最高に面白かった!
はじめは脱走を考えるぐらいイヤイヤだったのに、山の魅力に惹かれていき、村に住んでいる人に惹かれていき、気づけば家に帰っても山が気になるぐらいになる展開が素晴らしいです。
中でも山の描写がすごかった。冬山の厳しさから、春になったときの木々の目覚めや壮大な桜に圧倒されて。もちろん怖いことも多いけれど、人間は恩恵を受けているんだなと感謝の気持ちを覚えましたし、いろんなところで神様との繋がりを感じて、ゾクゾクさせられたこともありました。神おろしすごいよね。
そんな山と神の場で働く人たちもまた魅力満載でした。小さな村は全員が知り合いみたいなもので、ちょっとした内緒話すらできないぐらい近しくなってしまいますが、それが心地良く感じるんです。環境が違うといえばそれまでなんですが、木や山に対する思いなどは、こういう場があるからこそ、受け継がれて行くんだと思います。
家族同然のようでありつつも、村社会的な反応を受けることもあり、よそ者といった感覚を受けることもあったけれど、共に苦難を乗り越えて行くうちに、神去の神さまのお祭りに参加できるようになるほど信頼を築き上げた勇気に拍手したくなる。……まあ、祭りの正体を知ったらあれかもしれないけど。
ちなみに僕が一番好きな人は、繁ばあちゃんです。デュークのときのさりげない優しさは、温かくてじわっときたよ。
もちろん、恋愛要素もちゃんとあります。好きな人ができたら、告白する前に伝わってしまうぐらい周囲の視線がアレなんですが、ツンとした相手がちょっとだけ譲歩してくれたあたりいいですねー。できればもっと先まで見たかったな
読んでいるうちに、ゆっくりいこう、落ち着こう、そんな意味の「なあなあ」という言葉がに馴染んでる自分に気づきました。このお話は、勇気が村にやってきてからの一年を描いていますが、次の一年はどうなったのかという続編を期待してる僕がいます。
神去なあなあ日常
三浦 しをん
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