「それなら、わたしにいい考えがあります」
ミス・アンナが話に割り込んできた。
「双方、納得がいって、なおかつ、関西の味も関東の味もしっかり伝わります」
「それはなんですか?」
「屋台勝負です」
大正十四年。女は淑女たれという時代に、女学校に通う良家のお嬢様たちが、いけ好かない男たちを見返すため、野球を始めたお話の第三弾。今回は、大阪からやってきた乃枝の従姉妹・紅葉に、「東京にはおいしいものはない」と挑発されて、どちらがより多くのお客を集められるかという屋台対決をすることになるお話です。
好きという感情は、奥ゆかしく表現されると、同性でもドキドキしちゃうものがありますね。男前っぷりが大人気な巴が、小梅に近づいていく様子は、とても微笑ましく、見ていて楽しかった。小梅のドキドキっぷりも可愛い。
買い食いがちょっとした冒険に感じるほどのお嬢様たちのお話は、いつだって好奇心に満ちあふれてるし、ゆりゆりしい雰囲気もあるしで、自然と頬が緩んでしまったなあ。ああ楽しい。
そんなところへ乃枝の従姉妹の紅葉がやってきたわけですが、まあ、あの態度は、挑発と思われても仕方ないよなあ。なんだかんだいいながら、お嬢様たちは皆、負けず嫌いですから、「東京なんて」と言われたらかちんとくるし、対決すると言われたら、料理だろうが何だろうが頑張りますよね。
敵の手を知ったら、それを上回る努力を重ねていくところが、このチームの良さで。いつものように、この時代に、現代の知識をうまく組み込んで、斬新な味を作っていく伏線に、ぽんと手を打つ。わかりやすいというか、わかってたのに、気づかない僕はどれだけ鈍いんだ。
ただ、今回はぜんぜん野球がないので、ちょっと物足りないなあと思っていたら、これは前哨戦だそうですよ。次は、女学生同士の野球になるみたいなので、すこぶる楽しみです。がんばれ、桜花会!
帝都たこ焼き娘。―大正野球娘。〈3〉 (トクマ・ノベルズEdge)
神楽坂 淳
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