「体力はないし、技術もない。でも、投手がよくて作戦があって団結。これはすごいね」
どうやら言葉に嘘はないようだった。
乃枝は胸を張ると、いつもより少しだけ高い声を出した。
「わたしの作戦ですもの」
大正十四年。女は淑女たれという時代に、女学校に通う良家のお嬢様たちが、いけ好かない男たちを見返すため、野球で仇をとろうとするお話の第二弾。前作で、野球というものを知り、特訓を行ったお嬢様たちが、いよいよ本番の試合に挑むお話です。
ああ、いいなあ。楽しいなあ。
情報収集と言いながら、殿方とランデヴーしちゃったりするあたりに、何とも言えない乙女心を感じちゃったりしますが、それはさておき、試合前日のシーンでは、やることは全てやったという、ふっきれたものを感じてとてもよかった。ひとりだったら不安かもしれないけど、手を取り合える仲間がいるから安心できるという様子が伝わってくるんです。
お嬢様たちのお遊びと思われがちだけど、科学的な方面からのフォローもちゃんとしてて(おやつとかね!)、かと思えば、ピッチャーとキャッチャーは夫婦も同然と言い出して、二人で寄り添って寝るようにしたりと、なんかズレてるような気もするんだけど、それによって生み出される雰囲気が、とってもいいんだなあ。
そして試合当日。
桜湯で気持ちを引き締めるところで、落ち着いた格好よさを感じましたが、序盤、乃枝の策がことごとくハマっていくところには、してやったり感があって、対戦相手の男たちがちょっとずつ変わっていくところに、にやりとしてしまう。
ある意味、その時点で当初の目的は達成したようなものですが、やっぱり負けたくなくて、でも、体力の差はいかんともしがたくて。
試合という緊張感と、暑い最中の試合の疲れで、つらくなるときもあるんだけど、そんなときこそ淑女たれという態度と笑顔を見せるべく、お嬢様たちの姿が素敵でした。反対していた親たちがいつしか応援に回ってしまう気持ちがとてもよく分かる。
そして何より、野球を通して見えるお嬢様たちの団結力や、仲間を思う気持ちに、じんわりさせられました。
前作ほどの興奮ってのはなかったんですけど、とても楽しかったです。もう野球はしないのかもしれないけれど、でも、個人的には、この面子で、何らかの学園話があってくれたらなあって思いました。
大正野球娘。―土と埃にまみれます (TOKUMA NOVELS Edge)
神楽坂 淳
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