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猫を抱いて象と泳ぐ / 小川洋子

「あの子には言葉なんていらないんだよ。だってそうだろう?駒で語れるんだ。こんなふうに素晴らしく……」

2010年本屋大賞エントリー作品ということで、手にとってみました。

チェスと出会い、表舞台に上がることは無かったものの、伝説のプレーヤーとなった少年リトル・アリョーヒンの物語です。

これは、何と静かで、心にしみ込んでくるお話なんだろう。決して表に出ることはないけれど、チェス盤と向き合っている時の楽しさ、奥深さ、描かれる軌跡の美しさ、そんなものが伝わってきて、しかも自分だけでなく対戦相手の思いも見えてくるんですよ。これがまた素敵なんです。

特に一番良かったのは、少年にチェスを教えたマスター。でっぷりとした体格で、甘いものが大好きで、無口な少年を急かすことなく、ゆっくり考えさせて、きちんと導いて。この時代が一番温かく、幸せに思いました。
「慌てるな、坊や」
この言葉は、僕の耳に残ってる。

大きくなるにつれて、マスターだけでなく、他の人とチェスを指す事になるんですが、独特の打ち筋から普通の舞台に上がることができず、裏舞台的なチェス倶楽部で活動することになるんですが、ここでミイラと老婆令嬢のふたりに出会ったことは、彼にとって大きなことだったと思います。

どんな相手とでも、常に棋譜の美しさを求めて打ち、盤上で多くの詩を残した彼は、幸せだったと思う。でも、海の底で打つには、純粋過ぎましたよね。取り返しのつかないことをして、何とか抜けだそうとして。ようやく、ただ純粋にプレイするだけの環境を手に入れて。

良かったと思った。

老婆令嬢と新天地で再会したシーンは、悲しさもあったけれど、でももう一度新たにできるのなら、彼女がかつてうらやんだマスターのチェスを……と思ったから、じんわりと温かくなっていたんです。そしてもちろん、もうひとつ、待ち続ける手紙のことも。

それだけに、あとちょっとが悔しかった。涙がこらえられなかったです。

猫を抱いて象と泳ぐ - 小川 洋子

猫を抱いて象と泳ぐ
小川 洋子

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美しきチェスの世界 from 笑う学生の生活 2010-07-05 (月) 00:13
小説「猫を抱いて象と泳ぐ」を読んだ。 著書は 小川 洋子 天才チェスプレーヤー、リトル・アリョーヒンの物語 成長物語といった感じも とにかく 不思議...

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