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[森博嗣] 銀河不動産の超越

怠けてるわけじゃないけど、客観的にみて気力の足りない男が、大学の就職担当の先生に、ここだけはやめておけ、と言われた銀河不動産に就職した。未だ朝起きることに慣れないある日のこと、お金持ちのご婦人・間宮さんに、どんな用途に使えるか見当もつかないだだっぴろい家を案内したら、なぜかその家に自分が住むことになってしまった。広い家の一部でぽつねんと過ごす事は、特別苦でもないが、後に気づいた。この家に住むことが、大きな転換期であったことを……

行動的でもなく、周囲から見たら怠惰にまで見えそうな高橋君が、大きな家を格安で借り受けたら、仕事がとんとん拍子にうまくいくようになって……という、ほのぼの楽しく、恋愛要素も魅力的な連作短編集でした。
シンデレラストーリィみたいというと、ちょっと語弊あるけど、不動産屋の営業で、お客さんのちょっとした要望に困っているとき、がらんとした広い家のおかげでうまくいくという展開は、にやりとしちゃうものがありますね。

銀河不動産屋に物件を探しにくるお客さんの物件イメージってのは、ものすごーく抽象的なものが多くて、ほんとにこんなこと言われたら困るよなあと思うんだけど、お客のイメージに真面目に(でも心の中で)ツッコむ高橋君の言葉が、毎回ツボってくれるから、笑いをこらえるのが大変でした。

個人的に一番笑ったのは、五編目の「銀河不動産の忌避」ですね。以前、物件を案内した池谷さんの娘さんが、上京してくるという話をふんふんと聞いていたら、「嫁にもらってくれんか」と言われて、あたふたするお話です。
この池谷さんが娘さんの話を切り出すまでの過程が、ハンパじゃなく面白くて、やってきた娘さんは、控えめなんだけど押しかけで、いつの間にか流されて、自分でも嬉しいのか嬉しくないのか、なんともわからない状況に高橋君が追い込まれていく展開が最高でした。

それにしても、周囲の人たちはとても個性的で、ある意味、迷惑をかけてくることも多いんですが、それ以上に温かさを感じるものがありましたね。押しかけ女房な登美子さんとの付き合いをみなが祝福してくれて、大いに騒いでくれて。こういった後押しがなかったら、ひょっとしたら、高橋君も決断しなかったかもしれないし、そういうところも見てて、みんな盛り立ててくれたんじゃないかなと思ったりもする。

いやあ、面白かった。前半はゆるゆるで、後半は怒涛のラブコメで、ほんと楽しかったです。僕もこんな家に住んでみたいなあ。
一見、優柔不断で流されるだけのように思えるけど、実はその場その場で、最適なものを選んでいたというのが見えてくるラストもよかったです。
楽しいひと時を過ごせて幸せ。

銀河不動産の超越 - 森 博嗣

銀河不動産の超越
森 博嗣

文藝春秋(単行本)
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ちなみに、脇役の中で、ものすごい魅力を放ってくれた佐賀さん主役のお話が読んでみたいなと思ったのは、僕だけじゃないよね?

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