アルバイト情報誌を見たとき、結城は何かの間違いだと思った。時給十一万二千円だなんて。だが、もし本当だとしたら…・・・。そう思って応募した末に、結城が参加することになった<実験>のバイトは、都心から遠く離れた町の地下室で、12人の男女と7日間過ごすものだった。
密閉された空間、鍵ひとつかけられない部屋、不条理な十戒、そして部屋には、人を殴殺するための火かき棒があって……
高給に誘われた男女12人が、「暗鬼館」の閉ざされた地下室で、7日間を過ごすお話です。
クローズドサークルとか、変則的な館なんてものが出てきただけで、ワクワクさせられる身としては、序盤の変則的な設定だけで、かなり満足してたりする。しかも、「殺人」を容認するような言葉や、殺すたびに報酬の増額が累積されていくといった具合の煽りがあるんですから、ドキドキしないわけがない。
まあ、いくら殺人を促されたって、普通の人だったら、手を下すことはないんですが、たったひとつ状況が変わってだけで、不安が恐怖へと変わっていくという展開が、すごかったです。暗闇とはここまで恐ろしいのか、と痛感させられる次第。
さらに、閉鎖された空間で過ごすうちに、派閥のようなものが生まれ、疑心暗鬼になったり、限界を超えるとまた一部のことに神経が麻痺していくといった心理描写が、またすごかったです。
ミステリではあるんだけど、どちらかといったら、サスペンス色が強いかなと思っていましたが、謎解き後とその後の急展開を見ていると、いやいや、どうして侮れない。「半数」がこういう生き方をしてくるとは思いませんでしたよ。いやあ、やられた。人の好悪をうまく利用したやり取りに、惚れ惚れ。
「犯人」の目的については、ある意味純粋なものだったので、理解しやすかったですが、不気味だったのは、やっぱり彼女かしら。このあたりが、非常に、こう、後味の悪さというか、居心地の悪さというか、そういうものを感じさせられましたね。
そういう意味では、オススメしにくいものではあるんですが、面白かったです。もうちょっとミステリ色が強いほうが、個人的には好みだけど。
インシテミル
米澤 穂信
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