質量五万五千トンを超える宇宙施設「望天」で働く二ノ瀬英美は、惑星間飛行士の試験に落ちた。気のすすまないオフを迎えるぐらいならと、仲間のところへ戻り作業を手伝おうとしたとき、それは起こった。
突然の衝撃。消える照明。
気がつけばすべてのシステムが異常をきたしていた。空気漏れがおきている。AIに反応はない。そのうえ「望天」が落下している。
生存者はすらわからない中、不安を抱えた二ノ瀬の耳に、ダクトを通じて悲鳴が聞こえ……。
宇宙施設「望天」で発生した事故の中、わずかに生き残った人々が繰り広げる物語。
読んでいると段々息苦しくなってくるのは、生き残るための手立てを尽くす過程で、緊迫感が生まれてくるからでしょう。
今ある空気が無くなれば生きていけないし、ひとつ隣は真空になっているかもしれない。
まさに「壁の向こうは、すべてが敵だった」です。
たった一枚の壁が生死を分けるという恐ろしさが伝わってきます。
生き残った人々が何とかしようとする中でも、自己中心的な考えをしたり、つまらない嫉妬のために命の危険をさらしたりと、人間の愚かさというか醜さがいろいろ見えてくるところがとてもリアル。
なぜ、こんなときにそんなことでと思わなくもないですが、もし自分が当事者だったら、同じように自分勝手なことをしてしまうかもしれません。
時に落ち込み、時に諦め、過去の過ちを繰り返すことを恐れ、恐怖を忘れるために無理にでも立ち向かう。この人間ドラマにはとても魅せられます。そこにいるのは、ヒーローでもなんでもなく、いたって普通の人間でした。
次々に迫りくる危機や、生き残るための道のりの辛さなど盛りだくさんな内容ですが、安易に終わらせず、それでいて前向きな姿勢を見せてくれる終わりに、ホッとさせられます。
個人的にはもう少し登場人物たちが感情移入できるような登場人物たちであったらなと思わなくも無かったですが、一度読み始めたら手が止まらないと思います。
特に第一部の終わりの一言を見たら、もう!
思い出すだけでゾクゾクしてきます。
天涯の砦 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)
小川 一水
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