親善のため、世界各国を外遊していたカナコ王女は、日本の迎賓館での晩餐会を終えた翌日、大久保町を訪れて、旅館に到着する前に、誘拐された。
知り合いの家に向かうために、バスを待っていた芳裕は、偶然にも王女を誘拐した車と事故に合い、何とはなしに彼女の手を取って誘拐犯から逃げ出したが、あろうことか町中の人に、芳裕が王女を誘拐したと勘違いされて……
誘拐犯と勘違いされながら、王女と逃避行していくうちに、どんどんと王女に惹かれていって……という芳裕の身分違いの恋を描いたお話です。
いやあ、楽しかった。相変わらず、変な人しかいないなあ、大久保町は。オート三輪や町内放送の話など、ありえそうな話ではあるんですが、くだらなすぎて笑えます。実際にこういう目に合ったらたまらないかもしれませんが、のん気で親しみ溢れる人たちばかりなので、ま、いっかと思うこともあるなあ。いやしかし、話と関係ないところでもたっぷり楽しめますね。にやけ顔が止まらない。
誘拐されたはずの王女を送り届ける、ただそれだけのお話が、いつの間にやら王女暗殺問題が関わってきて、という展開なのに、まるで緊迫感あふれないのは、のほほんとした雰囲気が物語を占めているからですが、それでいてスピード感はあるから不思議です。次から次へと関係あるようで関係がない問題が起こって、ああ、なんてくだらない会話なんだろうと、呆れながらニヤついてたら、実は伏線だったと知らされたりするから、油断できないったらありゃしない。
そんな中、芳裕ののん気さがまた楽しくて。
誘拐犯に間違われるだけならともかく、銃で撃たれるは、ロケット弾を打たれるわで、大変な目に合いながらも、王女のカナコちゃんと一緒にいられることの嬉しさで胸いっぱいになってるところは、おいおいと思いながらも、読んでるこちらまで、嬉しくなっちゃうものがありました。
カナコちゃんもだいぶ変わってる人でしたけど、まんざらでもない様子を見せてくれて、それがまたとても可愛くて、青春だな、ちくしょー的雰囲気がたまりません。
のほほん和やかサスペンスが、急激に変化を見せたのは、芳裕が怒りを見せてからですね。今まで、何があっても、他人に対しては引いていた芳裕が見せた怒りには、驚きとまさかという不安を呼び起こさせられただけに、彼を包んでくれた神田さんがいてくれたことを嬉しく思いました。
ほっと一息もつかの間、まさかまさかで変転が起きて、いや、きっとここで、国籍問題が生きてくるに違いないと思ったのは、伏線とかそんなのを意識したのではなく、ただただ僕が必死に願ったことでした。
あの涙は、ほんと辛かっただけに、看護婦GJ!と声を大にして言いたい。
いやあ、面白かった。あの宝物をあげるラストを見ただけでも、満足させられたんですが、さらにさらに超ウルトラCの逆転劇を持ってきてくれたから、たまりません。ありえねーと思うよりも、満面の笑みを浮かべてしまった自分がいました。ひたすらにオススメな一品です。
さらば愛しき大久保町
田中 哲弥
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