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[キム・ハリスン] 死せる魔女がゆく 上 魔法探偵レイチェル

正規の捜査官であるあたしに、見習いがするような日常的取締りを押し付けるなんて。上司の嫌がらせにイライラしたレイチェルは、異界保安局(IS)を辞める決意をした。異界保安局との契約を破棄したものは死ぬなんて、どうせただの脅しに決まってる。
かつてコンビを組んだことがある<生ける吸血鬼>アイヴィの説得を振り切ったら、アイヴィも共に辞めると言う。ならば、二人(+ ピクシーのジェンクス)で探偵事務所を立ち上げる事にしたが、ISは脅しではなく、本当に彼女たちに手を出してきて……

ウィルスにより大打撃を受けた人類を救ったのは、それまでなりを潜めていた魔法使い、吸血鬼など異界の者たちってことで、人類と異界の者たちが共存する現代のアメリカが舞台となり、黒魔法使いや人狼、吸血鬼が絡むような事件を追う異界保安局の捜査官だったレイチェルが、美しく有能なアイヴィをパートナーに、ピクシーであるジェンクスを助手にして、事務所を立ち上げようとしたら、違約金を払わないレイチェルに元の組織から暗殺者が送られてきて……というお話。

ああ、もう。ハラハラドキドキさせられっぱなし。
ちょっぴり色気の足りないレイチェルが、自分の境遇に不満を持って、いろいろやってくれるんですが、もうちょっと我慢しようよとか、それは軽率すぎやしないかと思うようなことが多くて、まるで自分が彼女の親御さんになった気分にさせられて、心配しっぱなしです。

ISを辞めた直後からの苦難の連続には、ほらごらんと彼女の軽率さをツッツキたくなりますが、嘆きながらも、何とかしようと頑張る姿を見ていると、よく考えたら不条理なことしてるのは、相手の方なんだよなあと、段々レイチェルに同情して、気がつくと彼女に好感を持ってるから不思議。

共にISを辞めたアイヴィは、由緒正しき吸血鬼なんですが、妖艶極まりない描写に思わず胸をときめかせてしまうレイチェルの様子が楽しい(同性なのに!)。断血の誓いを立てているとはいえ、血を吸われたら奴隷状態なので、気を許しつつ、でも気を許せない緊張感がたまりません。 またレイチェルの仕種が、吸血鬼を刺激するものばかりなので、必死に我慢するアイヴィが、時々暴走しちゃうから困りもの。

そんなこんなで、家の外では暗殺者が、家の中では吸血鬼がいてと、落ち着く暇の無いドキドキの連続に引き込まれます。

アイヴィについてはともかく、ISからの暗殺者は何とかしないとってことで、対抗するための魔法薬を作ったりするけど、黒魔法には手を出さないあたりが、この子らしい潔癖さというか、清く正しい魔女っ子らしくいいですね。魔力があるってこともあるけど、こういうプライドを見せるところが、アイヴィも気に入ったんじゃないかと推測中。
ま、女の子らしいおませなところもありますけど。吸血鬼の誘惑の仕方の本を読んで、逆にアイヴィを誘惑しないよう気をつけるつもりが、本の内容にドギマギしちゃうところとか、可愛いもんだ。

なんか、話ずれてきた。
ともあれ、大手柄を立てれば、恩の大きさからISも彼女たちに手が出せなくなるだろうってことで、プリムストーンという、言わばドラッグのやり取りに、名高いトレント・カラマック議員が関わってる?という情報を手に入れてから、危険を承知でガンガン進んで、ネズミに変身するわ(でも変身したらネズミじゃなくてミンクだったり)、トレントの事務所に忍び込むわで、ああ、危なっかしい。

そんな危なっかしいレイチェルに付き添うピクシーのジェンクスがいいヤツだったなあ。小細工しか出来ないんだけど、彼がいなかったら、あっという間に終わってたでしょう。こういう助手がいてくれることは、彼女の強みでしょうね。

ようやくトレントの秘密を見つけたかもしれないと、鍵を握るモノを探ったところに、トレントが現れて……というところで上巻は終わり。
ここからどういう展開が待ち受けているのか、大いに楽しみです。

死せる魔女がゆく 上 [魔女探偵レイチェル] - ハリスン キム

死せる魔女がゆく 上 [魔女探偵レイチェル]
ハリスン キム

早川書房(文庫)
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