「わたしたちってなんて善良で、なんてお人好しの海賊なのかしら。呆れちゃうわ」
「今回ばかりはしょうがないだろう。人助けだ」
「だから、そこが既におかしいんじゃない。こんな命がけの人助けに精を出す海賊がどこにいるのよ」
手芸部の手伝いをしたシェラが、展示会で出会った少女と共に占いの館へと向かったら、その日から行方不明になり……というお話。
うーん、いつもほどの痛快さがないなあ。シェラが行方不明になったということで、若干重苦しい空気の中、リィとルゥがシェラ探しを始めていくんですが、顔が似ているという少年をして、シェラだと思い込むあたりは、ちと強引かなとも思わないでもない。
とはいえ、そこへ至るまでの道のりには、にやりとさせられるものがありますけど。警察だろうが、情報局の人間だろうが、手玉に取って追い詰めていく様は、楽しいものでした。力だけでなく、相手の社会的地位を脅かすリィの手段は、さすがとしか言いようがない。
肝心のシェラと思わしき男の子・アルフォンスは、辺境のクーア財閥と言われるレイヴンウッド家のお孫さんなんですが、これがまたかわいいんだ。リィを引っ張りまわすところは、大切に育てられた男の子らしい活発さがあって、おそらくシェラのことがなくても、あの事情を知ってしまったリィなら、何らかの手助けはしたんじゃないかなと思ったり。まあ、シェラのことがなかったら、こんな場所には来ないと思うけど。
彼らが集まる場所には、不思議と海賊や女王も集まって、といういつものパターンはありますが、いまいち見せ場がなかったのは残念です。あれだけのアクションをこなしたのに……。
もっと女王のクインビー姿とかに翻弄される軍を見たかった。海賊らしい海賊をするケリーの格好いい姿が見たかった。一流の感応頭脳をものともしないダイアナのハッキングが見たかった。いや、全部見れたんだけど、こう、なんていうか、時間稼ぎ役にしかなってなかったところが……ねぇ?
とまあ、いろいろ物足りないところはありつつも、今回珍しいものが見れたからいいか。あのシェラの本気の怒りは、たぶん、もう二度と見れないんじゃないかな。今後はたぶんリィから離れることなく、いつまでも太陽の周りを回る月のように、側にいてくれると思います。
追憶のカレン (C・NovelsFantasia か 1-50 クラッシュ・ブレイズ)
茅田 砂胡
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