傭兵総領、あるいは傭兵王と言われたライゲンベックが撃たれたという報は、大陸全土を駆け巡った。内容は不正確なものが多かったが、重体で命の危険にさらされているなどという本当のことを、今、他国や投資してきた者たちの耳に入れるわけにはいかない。
そして、一刻も早く実行犯の裏にいる者を捕らえることが肝要だと考えたレスティは、十番隊隊長のルナンに調査を依頼したが、口をつぐんだ実行犯に捜査は難航して……
龍族、鳥族、犬族、猫族、人族、またその混血などが住む世界で、最下層である人族のベルネが、龍族と出会う旅に出るお話。といっても、まだ旅はしておらず、国境を渡る許可証を手に入れるために、傭兵集団「鋼の風」に入団して、いろいろ経験している途中です。
前作では、傭兵集団の各隊長の視点で、ベルネ(団の中ではレスティ=厄介者と呼ばれてる)の成長する姿が見えましたが、今回はベルネの話ではなく、団長の半生、団長を狙った輩を調査するルナン、異種族における恋愛、おめでたき結婚話などなど、「鋼の風」の中の人たちのお話でした。
幼い頃から面倒見が良かったライゲンベックと、そんな彼のフォローをしてきたベローが、如何にして犠牲を少なく、かつ儲けるかということを考えて、傭兵をやってきた過程は、なるほど、こういう人たちだからこそ、「鋼の風」は大きな信頼で結ばれる事になるんだなと納得です。ライゲンベックとベローの絆は、憧れるものがありますね。
信頼が大きいからこそ、ライゲンベックが狙われた時の衝撃は大きかったですが、団長不在、副団長多忙という中でも、各隊の隊長クラスがそれぞれ自分たちで考えながら、問題をひとつひとつ解決していく展開は、各人たちの成長と、混血の町が育まれていく姿が見えて、嬉しく思いました。特に人族エヴァと犬族のバートの異種族の恋愛話は良かったなあ。
町の発展を妨害しかねない騒動へと発展しながらも、収束させたワイルの手腕と、町の人たちの意識の変化は、王道展開ですけどグッとくるものがありました。
一番好きな話は、第十話の団長とピコの結婚話。
めでたいお話で盛り上げようという政治的判断ってことで、渋々頷きながらも、内心では嬉しくて嬉しくてたまらないピコの様子にニンマリしましたが、その後、彼女を襲った災難のほうがもっと楽しかった。
領地を治める人を夫とするため、結婚式までに礼儀作法から何からを身に付けさせられるべく厳しい指導が入ったおかげで、ピコだけじゃなく、お付の人たちも「結婚やめませんか」と真顔で言い出す状況が楽しい。
戦場等ではたくましき人たちでさえ、泣き言ばかりだった結婚式準備でしたが、決めるときはビシッときめるあたり、やっぱり格好いいですね。特に主役たるピコが素晴らしい。結婚式という事を荒立てることができない状況で、自分達のプライドをきっちりと守ったシーンには、心奮わされるばかり。あの「静かな闘い」を見てしまったら、もうピコに惚れるしかないです。格好良すぎる。
指導を受けていた間は、決して仲が良いとはいえなかったピコとイヴリーナでしたが、式が終わった後、ふたりの間に生まれた感情については、心にくるものがありました。いつか再会を果たしてほしいですね。
この積み上げれたものが、とある出来事から、少しずつ怪しげな雰囲気になっていくんですが、決して折れず意地を見せ付けた「鋼の風」の姿と、信頼で結ばれた町の人との交流が見えるところに、思わず涙。
いやあ、面白かった。最後に傭兵許可証が出てきたことで、ああ、そうだったとベルネの目的を思い出しました。となると、「鋼の風」の話はここでおしまいなのかしら。それとも、もうちょっと一緒にいるのかしら。
どうなるかわかりませんが、龍族の影が少しずつチラついてきているので、あと2冊、どういう展開が待ち受けているか楽しみです。
傭兵王 創世の契約 3
花田 一三六
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