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[桜庭一樹] 青年のための読書クラブ

幼稚舎から高等部までが同じ敷地内にある伝統ある女子校である聖マリアナ学園の旧校舎の裏に、崩れかけたビルがあった。そのビルの三階には「読書クラブ」なるお嬢様学校内の異端者が集うクラブが存在しており、学園史には残されない奇妙な事件の真実が、少女達の手によって記録されていて……

聖マリアナ学園が開設される経緯からの100年の間に起きた表に出てこない事件、1969年の「烏丸紅子恋愛事件」、1819年の「聖女マリアナ消失事件」、1980年代後半の「奇妙な旅人」、2009年の「一番星」、そして100年目となる2019年の「ハビトゥス&プラティーク」を、その当時に在籍していた「読書クラブ」のメンバーが、記録として綴ったお話です。

いやあ、面白かった。「読書クラブ」らしい文学的要素に、女子校特有の華やかさと陰湿さ、さらにはミステリーな展開も見せてくれるんですから、面白くないわけがない。

毎年聖マリアナ祭の折に投票で決められる「王子」を読書クラブの面子から生み出そうとする「烏丸紅子恋愛事件」が、とても熱かったですね。きれいだけど野暮ったい紅子を「王子」に仕立て上げるため、当時の「読書クラブ」部長が、権力争いやら大衆操作をして、押し上げていく様は、表の華やかさと裏の陰湿さを素敵に描いてくれてました。

外では意味を成さない閉ざされた空間ならではの出来事に、皮肉も感じましたね。いやあ、面白い。ひょっとしたら自分の高校でもこんなことがあったのかもしれないなんて、想像するとより楽しくなってしまいましたよ。いや、ないと思うけど。あったらやってみたかったけど。

フランスから渡ってきた修道女のマリアナが、聖マリアナ学園を設立した経緯を描いた「聖女マリアナ消失事件」は、何とも切なく、それでいてミステリアスなお話でした。特にラストは、思わずくらくらきちゃうほどでしたね。はたしてどっちだったのかなんてことは、残したものの事を考えると、些細なことのような気がしますが、興味は尽きないなあ。

1980年代後半になると、バブル景気のおかげで、閉ざされた乙女たる楽園に新たな風が吹きあふれてくるんですが、ある意味もっとも読書クラブが報われなかったときかな?「奇妙な旅人」では、静かに本を読むだけのクラブが、政治的なものに巻き込まれることになってしまいましたが、正義感あふれる時雨と、文句を言いつつも黙々と本を読む部員と、一度包み込んだら、部長として最後まで面倒を見るきよ子が、良かったです。歴代部長の中で、一番好きだなあ。ほんとカッコいいよ、この人。

2009年には、学園のロックスターが読書クラブから生まれましたが、まさか、逆襲的な物語になるとは思いませんでした。「一番星」では、人の暗黒な部分と純粋な部分の両方が、くっきり見えましたね。それこそがスターの証なのかもしれませんが、いやはや振り回される人は大変です。
でも「ただいま」と言われたときには、何ていうか、妙にほっとしたなあ。なんでだろ。

どれもこれも面白かったですが、やっぱり最後の2019年「ハビトゥス&プラティーク」が、一番良かったです。女生徒の英雄に対する幻想は、どんなに時が経っても変わらないことが伝わってくる描写にニヤリとさせられましたが、ただ一人となってしまった読書クラブ員の物語から生まれる行動と、物語との繋がり「……飛んでいく!」にやられましたね。いやあ、最高じゃないですか。

これだけでも良かったですが、何といっても最後の最後が素敵でした。起源を髣髴させる喫茶店で、読書という共通項を持つものたちが集い、繋がっていく。なんて素敵なんだろう。
歳を取っても、こういう繋がりが続いていたら、こんな嬉しいことはないでしょうね。

はじめから最後まで、きれいに決めてくれて、個人的にはかなりヒットです。嬉しい事にサイン会の整理券を入手したので、今から楽しみ。

青年のための読書クラブ - 桜庭 一樹

青年のための読書クラブ
桜庭 一樹

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