「でも、行っとこうかなって思うと必ず考えちゃうことがあるのね」
「聞きましょう」
「もしあたしがたまたまあなたの好きな作家じゃなかったら、あなたはあたしにこれほど興味を持ったかなって」
小説家の妻と、彼女を支える夫。そんなふたりの幸せな出会いと、過酷な運命を描く物語。Side:Aでは、小説を書く(深く思考する)と寿命が縮むという世界でたったひとりしかいない病気にかかった妻のお話、Side:Bでは、献身に支えてくれて、一番の読者だった夫に腫瘍が発見されるお話しです。
ああもう……物語を書く人と読む人の出会いは、とても素敵で。同じ職場に勤めて、普段は距離を置いているのに、自分だけが知る一面や、気にかかっていく様、そして恋に落ちる瞬間。どれも、やばいぐらいニヤつかせてくれる。Side:A、Side:B共に、女は作家で男は読む人なんだけど、男の人の気持ちがすんごいよくわかる。自分の好きな作品を書いてる人が側にいたら、気にならないわけがないし、惚れちゃいますよ。
Side:Aでは男視点で描かれているから、男の僕としては感情移入しまくりです。いっしょに住むようになり、彼女の書く作品を読ませて貰って、それだけで十分満足していたのに、ちょっとだけ才能を飛ばしてみたくなって……成功とその反動がすごかった。彼女の一面を見せられる度に惚れて、でも弱さを痛感させられて、多くの人に届くと言うことは、悪意が返ってくるということでもある、その怖さを実感させられるばかり。
きつくて辛くて苦しくて、それでも愛する人のために紡いだ物語が、涙を誘って……切ない。
切ない思いにやられたあとのSide:Bは、女視点なんですが、なんですかこの旦那さん格好良すぎませんか。そつなく仕事して割り切り上手で、人を踏み込ませない壁を感じさせていたのに、一冊の物語が二人を繋げてくれて。支えてくれる旦那さんに甘えてるとわかっていながら、幸せな日々を過ごしていたのに……愛する人を失ったらという思いが恐怖を呼び、間違ったことをしそうになったけれど、ちゃんと向き合うことが出来て、それは良かったと思いました。
愛する人、愛される人。別れは悲しいけれど、思いを伝えた時間は無くならない。きっときっと、幸せだったと、そう信じてる。微妙に本当の話っぽいところもあってゾクゾクするんですが、たぶんこれはフィクション……だよね?
ストーリー・セラー
有川 浩
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