― 僕の友だちも湖で行方不明になりましたが、気の向いたときに還ってくる。
― ええ、そう、そういう土地柄なのですね。
家の守をしてもらえないだろうか ― 亡くなった友人の父親からの言葉は、売れない物書きをしていた私にとって渡りに船だった。四季折々で多彩な風景を見せる庭や、家を訪れるちょっと不思議な生き物などとの出会いを、美しく幻想的に描く物語。
これは素晴らしい。
サルスベリの木の恋や、河童や小鬼との遭遇、狸の化かし合いなど、動植物のみならず、亡くなった親友までもがふらっと現れたりと、不思議という言葉では言い表せない出来事なのに、それがさも当たり前のように感じる幻想的な風景が素敵でした。描写の美しさには、思わず声に出して読みたくなるものがありますね。
植物や季節の変わり目につけられた名に、どんな意味があったのか。先人が見た風景が目の前に浮かび上がってくる。
いろいろな不思議と遭遇して、驚くこともあれるんだけど、あまり深く考えてない……というと語弊がありそうですが、どこか暢気と言うか鷹揚というか、いったん受け入れてしまう主人公の様子に、微笑ましさや温かさを感じて、いいんだなあ。狸に化かされそうになったときのサルスベリの木とのやり取りは、ほんとよかった。
でも、一番の不思議は、何かと手助けしてくれるお隣のおかみさんじゃないかと思う僕がいる。
いやあ、ほんと素敵な物語でした。静けさすら味わえるこの物語は、この先、何度も読み返すと思います。いい出会いに恵まれて幸せ。
家守綺譚 (新潮文庫)
梨木 香歩
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