「それは、お前のことをよくわかってなかったから……」
「わたしのなにがわかってなかったんですか?」
「……だ、だから!お前が、意外と間が抜けてて……」
ごにょごにょと言葉を濁しつつ、ルシードは、困ったように言った。
「けっこう、俺がいないと、駄目なんだなってこと」
仲睦まじい大公ルシードと公妃ジルは、実は仮面夫婦で、彼らの正体を知るマシアスと三人で手を組み、打倒パルメニアのために、国力を強化していこうというお話の第五弾。賭博際の最中に勃発したナンセの継承者問題に、隣国の王子オースが仕掛けてきて……ナンセを賭けてオースとジルの謀略合戦が始まるお話です。
いやはや、天然とは恐ろしいものだ。
隙あらば主導権を握ろうとするジルとオースの知力を尽くした争いは、出足が遅れた分、オース有利だったけれど、何も考えていなかったルシードの直球で、切り崩していく展開が面白い。物事を計算して動かしていく人たちは、突拍子もないことをしでかす人に弱いですよね。この場合、ルシードがいたというその一点が、ジルを勝利に導いたと思います。
にしても、危ない橋を渡るものだ。賭博祭の特性を生かした逆転劇ではあったけど、はったり部分のほうが多かったし。といっても、ジルがあそこまで思い切ったことができたのは、ルシードがいたからこそでしょうけど。
神は信じない。でもルシードなら……どうなんでしょうね?とニヤニヤ。
ルシードもルシードで、ジルのことが心配だから、思い切った発言をしちゃったりして、キャーキャー転げ回りそうになりましたよ。あれほどの告白が、ジルの脳内フィルタを通すと、色気なくなるあたり、さすがだと思いました。……頑張れ、ルシード。君の気持ちはいつか伝わる……といいね。
仮面夫婦のニヤニヤっぷりを存分に味合わせてくれたお話でしたが、最後にきてまた不穏な出来事があったなあ。ジルがみたものは何だったんだろう?パルメニアで何が起きてるんだ?続きが気になるばかり。
プリンセスハーツ―初恋よ、君に永遠のさよならをの巻 (ルルル文庫)
高殿 円
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