「もうしないから。あんたを不安にさせるような真似は……」
沙漠に水をもたらすシムシムの種子を植える町を探す「シムシムの使者」だったラビサと、彼女の旅路を付き合ったジセットが繰り広げる冒険シリーズの第五弾。今回は、マンナの都市へ名物の織物を売りにいったら、曰くつきの塔を巡る事件に巻き込まれて、というお話。
新年を迎える時期になったら、いつもは元気なラビサがやけに暗くなってしまい、さて何があるのかなと物語を読み進めてました。思わせぶりな表現がありつつも、心のうちに何を隠しているのか見えないのがもどかしい。
とはいえ、そんな状態でも、自分のためでなく、村の人たちのためなら突っ走っていけるところがラビサらしいですけど。
幽霊が出るという曰くつきの塔の話では、意外な弱点を露呈したラビサが可愛くもあり、そんなラビサをからかうジゼットの様子に、好きな子をいじめる男の子な雰囲気を感じてにやりとしてしまう。ちょっとしたハプニングから、ジゼットの胸で泣くことになってしまったラビサには、胸が痛みつつも、頬が緩む僕がいた。
それにしても幽霊の正体見たり、ですね。思い当たらなかったのがちょっと悔しかったりしますが、それだけじゃなく、塔の偏屈じいさんの物語と、かつてこの地にいたという歌い手などが絡み合った出来事を紐解くために、ジゼットが悪巧みをするところがとても楽しかったです。
これまで、光として焦点が当てられていたラビサのちょっとした闇が見えて、一方のジゼットは少しずつ光に引き寄せられて。想いはもう見えているのに、いまだ変わらぬ距離でいるのが不思議というかなんというか、もどかしくもあり、でも、このままでいてほしくもあり。何でしょうね、この気持ち。
ただ「星詠みの徒」であるリードゥの先見と様子が変わってきたのは嬉しいかな……と思ってたら、なにやら怪しい動きがありますね。今度は「星詠みの徒」の中の動きに巻き込まれていくのかな。
リードゥの思惑が見えないこともあり、何ともいいがたいものがありますが、ラビサはきっとリードゥの手助けをするだろうし、そうなったらジゼットだって……ねぇ?
いったいどうなっていくのか楽しみです。
沙漠の国の物語―眠れる望楼 (ルルル文庫)
倉吹 ともえ
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