「少しずつでいいから、もっと自分のことを考えてくれ。そなたが何もかも諦めてしまったら、俺は悔しいし、淡路や葛葉だって悲しいだろう」
桜姫の瞳が揺れる。そうだ、悩めばいい。諦めるよりずっとましだ。
「忘れないでくれ。そなただって、幸せになっていいんだ」
言われなき出来事で鬼姫と呼ばれるようになってしまった少女・詞子と、人は善くとも不器用さから貴族仲間たちに蔑まされていた少年・雅遠が出会って惹かれあっていくシリーズの第二弾。今回は、雅遠が頻繁に出かけることを不審に思った乳兄弟が、詞子のことを知ってしまい……というお話。
ああ、甘い。名前どおり、普段は雅なんてものから遠く離れたことばかりやってるのに、詞子といるときは、不意打ちのように甘い言葉を投げかけるんですから、胸キュンものですね。本人は狙ってやってるわけじゃないから困りものですが、恥ずかしくも心地よい二人っきり空間が素敵でした。
幸せになることを考えてはいけない、耐えていればすべては諦められると、そう信じて心を閉ざしていた詞子が、雅遠によって心を開き始めてきた直後に、「鬼姫」としての現実を目の当たりにしたあたりには、仕方ないとは思いながらも、やるせないものがありました。特に雅遠が害があったのは、自分が災いを呼んだからだと、自虐する詞子の姿はあまりにも痛々しくて……。
そんな時、さっそうと現れて、やさしく包み込む雅遠の姿は、くーと思いながらも、嬉しくなるものがありました。これまではちゃらんぽらんな印象が強かったけれど、決して頭が悪いわけじゃないところを見せて、さらには詞子を守るために、自分も立ち上がらなくてはいけないと考え始めて、ちょっとずつちょっとずつ変わっていく姿を見ていると、人を好きになるってすごいことなんだなと思える次第です。
詞子もまた、ただただ気弱に流されていただけの毎日から、ちょっとだけはみ出していきそうですし、この二人の出会いは、運命なんだなあとにこにこ。
ただまあ、家同士が犬猿の仲なので、いざとなったらどうなるかはわかりませんが……。っていうか、個人的に気になってるのは、例の弟君ですね。意外とたいしたことないんじゃ……
桜嵐恋絵巻―雨ひそか (ルルル文庫)
深山 くのえ
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